EXHIBITIONS

原田裕規「Unreal Ecology」

原田裕規 Waiting for 2021

原田裕規 One Million Seeings 2021

原田裕規「One Million Seeings」(デカメロン、東京、2021)での展示風景

アペルト14 原田裕規「Waiting for」(金沢21世紀美術館 長期インスタレーションルーム、2021年)展示風景 撮影:木奥惠三

 写真、映像、CGなどにより、イメージと人間の関係性を問うアーティスト・原田裕規。その個展「Unreal Ecology」が京都芸術センターで開催される。

 原田は1989年生まれ。社会のなかで広く認知されている視覚文化をモチーフに、人間の身体・認知・感情的な限界に挑みながら、現代における「風景」が立ち上がるビューポイントを模索している。2016年に東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端芸術表現専攻を修了、17・21年に文化庁新進芸術家海外研修制度研修員としてニュージャージーとハワイに滞在。実写映像、パフォーマンス、絵画、CGIの制作のほか、キュレーションや書籍など多岐にわたる表現活動を行う。主著に『ラッセンとは何だったのか?』(フィルムアート社、2013)。21年に金沢21世紀美術館で開催された個展「アペルト14 原田裕規 Waiting for」では、33時間におよぶ長編CGアニメーション作品《Waiting for》を発表し話題となった。

《Waiting for》は、ドイツ・ロマン主義の風景画や1960年代のコンセプチュアリズムに通底する「水辺」への関心をモチーフに、その多義的な空間性を3DCGによってビジュアライズした作品。本展では《Waiting for》に加えて、長野県の諏訪湖で撮影された映像を用いた新作インスタレーション、24時間にわたって写真を見続ける様子を記録した《One Million Seeings》など、新旧作品が新たな構成で展開される。

 本展タイトルに用いられた「Ecology(エコロジー)」という言葉は、環境保全や環境保護といった意味に加えて、生態系や環境そのものも指し示す。それに対して「Unreal Ecology(アンリアル・エコロジー)」は、日本語にすると「人工的な環境/人工的な生態系」という意味合いになる。「Ecology」という言葉の幅広さと同様、「Unreal Ecology」というタイトルもまた、生成的につくられた仮想空間から、現実世界の自然環境、現代文明の消費流通システムに至るまで、幅広い対象をとらえている。

 本展を通じて原田が投げかけるのは、CG、映像、写真などの「イメージ」もまた、独自の生態系をもっており、それに対して私たちがもつべき倫理観とはどのようなものかという問い。本展に並べられる新作インスタレーション、《Waiting for》と《One Million Seeings》の3つの作品は、それぞれの方法でこの問題に向き合った実践の記録であると言える。

 なお本展は、アーティストや芸術団体を公募し、連携を強化しながらその活動を支援することで新たな価値を創造する「Co-program(2021年カテゴリーB)」の採択企画であり、京都芸術センターとの協働プロジェクトとして開催される。