EXHIBITIONS

廣川玉枝 in BEPPU

鉄輪むし湯、火男火賣神社、大谷公園ほか、別府市内各所およびオンライン
2021.12.18 - 2022.02.13

「廣川玉枝 in BEPPU」メインビジュアル

廣川玉枝

衣裳イメージ

鉄輪むし湯 作品イメージ

 国内有数の温泉地、大分県別府市に毎年1組のアーティストを招聘し、地域性を活かしたアートプロジェクトを展開する個展形式の芸術祭「in BEPPU」。6回目となる今回は、服飾デザイナーの廣川玉枝を迎えて開催する。

 廣川は、ファッション、グラフィック、サウンド、ビジュアルデザインを手がける「SOMA DESIGN」の代表であり、同時にブランド「SOMARTA」を立ち上げて「 東京コレクション」にも参加。単独個展として「廣川玉枝展 身体の系譜」(西武渋谷店、2014)を開催したほか、Canon「NEOREAL」展、TOYOTA「iQ×SOMARTA MICROCOSMOS」展、YAMAHA MOTOR DESIGN「02Gen-Taurs」など企業とのコラボレーション作品を多数手がけ、2017年には、SOMARTAのシグネチャーアイテム「Skin Series」がニューヨーク近代美術館に収蔵され話題を呼んだ。主な受賞歴に、第25回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞(2007)、WIRED Audi INNOVATION AWARD(2018)などがある。

 日常生活が大きく変化し、先行きを予測できないこの時代に、廣川が本祭のテーマとして見出したのは「祭」だ。時間、場所、人、様々なものを未来へとつなげていくために、廣川は新たな「祭」を別府にて市民とともにつくり上げ、とりわけ別府の「地嶽」に感銘を受けたことから、噴気が沸き立ち大地のエネルギーを直接肌で感じられる鉄輪温泉街をメイン会場として、「廣川玉枝 in BEPPU」を展開。本祭は、廣川が創作した「祭=神事」と、鉄輪エリアでの屋内外のインスタレーションや、祭で使用する衣裳展示などの常設展示で構成される。

「祭」では「山」から「町」、「町」から「海」へと温泉の水脈をたどるように、別府ならではの新たな3つの神事を奉納する。「山」では疫鬼を払う「追儺(ついな)式奉納」を執りおこない、神様を呼び覚まし、芸術祭の始まりを告げる(出演:湯浅永麻、オンライン配信)。続いて「町」では冬至の時期の「地嶽祭(じこくまつり)神事奉納」とし、鶴見岳の2つの山頂を神格化した二神を祀る「火男火賣神社」から「鉄輪むし湯」までの道のりを、廣川のデザインした地嶽の神々の衣裳を纏い、神の依り代となった市民が練り歩く(出演:湯浅永麻、大宮大奨、鉄輪エリアで実施・オンライン配信)。そして「海」では、忌火を海へ送る「火祭(ほのおまつり)神事奉納」によって疫鬼や災厄の侵入を防ぎ、春到来を祝福するととともに、芸術祭の終わりを告げる(2022年2月13日公開予定)。

 また、常設展示「鉄輪むし湯」では、廣川の代表作「Skin Series」でつくられた魔除け提灯や暖簾で大胆に彩り、楔祓(みそぎはらえ)のインスタレーションを展開するほか、由緒ある火男火賣神社と噴気たなびく大谷公園の2会場で、「祭」で使用する神々の衣裳を展示する。

 人類の歴史において、疫病や自然災害といった苦しい状況にある時こそ催されてきた「祭」。廣川が別府の市民とともにつくる「祭」は、パンデミックや災害、環境問題など、様々な課題を抱える私たちに、希望と活力をもたらしてくれるだろう。