EXHIBITIONS

開館30周年記念 特別展

限らない世界/村上三郎

2021.12.04 - 2022.02.06

村上三郎 作品 1957 芦屋市立美術博物館蔵

村上三郎 河小屋 1952 芦屋市立美術博物館蔵

村上三郎 作品 1958 芦屋市立美術博物館蔵

村上三郎 作品 1959 個人蔵

村上三郎 通過 1956 第2回具体美術展

村上三郎 空 1956/1993

「第25回芦屋市展」ポスター 1972 個人蔵 デザイン=村上三郎 ※中央部分が四角くくりぬかれ、背後がポスターの一部に切り取られるデザイン。

仁川幼稚園 1985 撮影=塩野真孝

 芦屋市立美術博物館は開館30周年記念として、特別展「限らない世界/村上三郎」を開催している。

 具体美術協会(具体)の中心メンバーとして知られる村上三郎(1925〜1996)。神戸市に生まれた村上は、1943年に関西学院大学予科に入学し、神原浩に学んで油絵を始めた。48年に関西学院大学文学部哲学科を卒業後は、伊藤継郎に師事し、50年より新制作協会展に出品。51年に関西学院大学大学院で美学を専攻し、同年より新制作協会で活躍していた西村元三朗や網谷義郎、白髪一雄らと集まった「ジャン」、54年には新鋭な美術家を目指した金山明や白髪ら若手研究グループ「0会」へ参加した。その間の「第5回芦屋市展」(1952)に初出品して以降、第47回展(1994)まで出品を続けた。

 55年に具体に参加し、同年の「第1回具体美術展」でハトロン紙を体当たりで突き破る作品、通称「紙破り」を発表。57年の「第6回関西総合美術展」洋画部門で木箱《作品(坐って下さい)》を出品し物議を醸した。また、同年の「第3回具体美術展」では、画面が剥落し続ける絵画を出品。50〜60年代にかけては、パフォーマンス的要素をもつ作品とあわせ、強烈なストロークで描かれた大型のタブローなどを制作し、平面作品での表現を追求した。具体解散後は、会期中一言も発しない「無言」に代表される、能動的な表現を放棄したかのような作品群を展開した。

 芦屋市立美術博物館では、村上が新制作協会に出品していた時代の作品から、具体美術協会で活躍していた時期、解散以降の作品12点(組)を所蔵している。村上が紹介される時、「具体」の会員としての一面で語られることが多いなか、96年に同館で開催した「村上三郎展」では、具体という枠組みを解体し、一作家、一人の人間としての「村上三郎」の世界に迫った。

 歴史を画する96年の「村上三郎展」から、そして村上の没後から25年となる今年に開催する本展「限らない世界/村上三郎」では、具体時代の代表作や70年代の個展とともに、これまで紹介されることが少なかった新制作協会時代の作品も紹介する。

 会場は時代を追って、「出発/新制作協会の時代 1943-1954」「探究・追求/具体美術協会の時代 1955-1972」「回帰/個展 1971-1977」「絵は自由/美術教育 1950-1995、芦屋市展 1952-1994」で構成。作品約50点に「紙破り」の資料展示や、未発表であった作品制作のためのメモ、記録写真や映像資料などを加え、村上の活動を多角的に振り返る。