EXHIBITIONS

東日本大震災10年 あかし testaments

2021.10.09 - 2022.01.23

北島敬三 「UNTITLED RECORDS」より《青森県外ヶ浜町》 2011 © KITAJIMA KEIZO

コ・スンウク 石の蝋燭 7 2010 © Koh Seung Wook

豊島重之主宰モレキュラーシアター公演 Legend of Ho 2000 Photo by Toru Yoshida

山城知佳子 あなたの声は私の喉を通った 2009 © Chikako Yamashiro Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 甚大な被害を及ぼした東日本大震災から今年で10年。青森県立美術館では、4人のアーティストによるグループ展「東日本大震災10年 あかし testaments」を開催する。

 この展覧会では、過去の暗闇のなかに葬られつつあるもの、あるいは葬られて「見えなくなったもの」を照らし出す光を「あかし」と呼ぶ。「あかし」は暗闇に光をともす「灯(あかし)」であると同時に、ひとつの事柄が確かであるよりどころを明らかにする「証(あかし)」でもある。時間とともにうすれゆく震災の記憶を、いかに次世代へとつなぎ、教訓を伝えていくか。本展は時代の趨勢から取りこぼされてゆくものに目を向けてきたアーティストたちの作品を通して考える。

 参加アーティストは、日本を代表する写真家のひとり・北島敬三、韓国・済州島出身で現代美術の最前線で活躍するコ・スンウク、沖縄出身で、いまもっとも注目されている中堅アーティストのひとり・山城知佳子、そして八戸市出身で演劇・美術・批評など多方面で才能を発揮した豊島重之(1946〜2019)。4人のアーティストの写真や映像が展示室にともす「灯=あかし=証」を通じて、時間がもたらす風化や忘却の暗闇のなかに、災厄をのりこえ、共に生きるための世界を照らし出す。

 北島敬三は、震災をきっかけにスタートさせた風景写真のシリーズ「UNTITLED RECORDS」と、人物を定点観測的に撮影した肖像写真「PORTRAITS」を展示。コ・スンウクは、第二次世界大戦後の済州島で多くの島民が犠牲となった「済州島四・三事件」をテーマにした映像作品を中心に、ドローイングや写真、新作映像などを公開する。

 山城知佳子は、戦争の記憶をテーマにした初期の傑作《あなたの声は私の喉を通った》をはじめ、新たにに構成した映像インスタレーションや新作の写真などを発表。そして豊島重之については、主宰する劇団モレキュラーシアターの舞台作品《直下型演劇》(2002)のセノグラフィー(舞台装置)を中心に、写真やサウンドインスタレーションなどを展示する。

 なお本展は、震災という出来事をより広い歴史のなかで、より多角的にとらえるべく、青森県立美術館の担当キュレーター・高橋しげみに加え、歴史や政治、そしてアートについて深い思考をめぐらせてきた2人、李静和(リ・ジョンファ)と倉石信乃を共同キュレーターとして迎える。