EXHIBITIONS

伊庭靖子展

伊庭靖子 untitled 2021-03

 京都を拠点に活動する画家・伊庭靖子の個展が、ギャラリーあしやシューレで開催される。10月31日まで。

 クッションや陶器など身近なモチーフを題材に、空間の光や質感と絵画の関係を見つめてきた伊庭。人は「見る」ことで何を認識しているのか、ものの「あわい」や「あいだ」を意識し、「見る」ための方法を追求し続けている。

 モチーフを写真に撮り、その写真をもとに油彩で描くフォトリアルな作品は、映像的な「質感」をとらえる試みから始まった。次第に、ものそのものが発している「質」を描くことへと作家の興味が変遷し、アクリルボックスのなかに素材を入れ込み、周囲の風景や反射した光が映り込む作品を描くようになった。アクリルボックスに囲まれた風景は、ものの表面に表れる光や、そこに到達する空気、それらと鑑賞者とのあいだに複雑な距離感を生む。

 2019年の東京都美術館での個展「伊庭靖子展 まなざしのあわい」から2年を経たいま、本展では風景の静物画ともいうべき新たな展開となる作品を紹介。繊細な陰影のグラデーションによる風景をモチーフとして、「見ること」をめぐる実験を続ける伊庭の新シリーズに注目してほしい。