EXHIBITIONS

加藤翼 縄張りと島

加藤翼 The Lighthouses - 11.3 PROJECT 2011
Photo by Kei Miyajima © Tsubasa Kato Courtesy of MUJIN-TO Production

加藤翼 Underground Orchestra 2017
© Tsubasa Kato Courtesy of MUJIN-TO Production

加藤翼 Superstring Secrets: Tokyo 2020
© Tsubasa Kato Courtesy of MUJIN-TO Production

「加藤翼 縄張りと島」展が東京オペラシティアートギャラリーで開催。人々との協働で作品を展開するアーティスト・加藤翼の美術館初個展となる。

 加藤は1984年生まれ。2007年武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業、10年同学大学院美術研究科絵画専攻油画修了。複数の参加者による協働作業が生み出す行為を映像、写真などを作品として発表し続け、数多くのリサーチやプロジェクトをグローバルに展開し、高い評価と注目を集めている。

 ある土地に集まった人々が知恵を出し合い、ロープと人力だけで巨大な構造体を引き倒し、引き起こす「Pull and Raise」シリーズは、加藤翼の代表作のひとつ。「3.11」を逆にした「11.3(文化の日)」に行われた《The Lighthouses ‒ 11.3 PROJECT》(2011)は、東日本大震災後の福島に集まった約500人が、津波で壊された家々の瓦礫によって、灯台のイメージに組み上げられた構造体をロープで引き起こす試みであり、このプロジェクトの構想がきっかけとなって、震災からの復興を目指す地区の祭事の開催へと発展した。

 本展は《The Lighthouses - 11.3 PROJECT》をはじめとする加藤の代表作を網羅。世界各地で実践されてきた、2007年以降の映像作品26点および写真、模型などで構成し、作家のこれまでの歩みと全貌を紹介する。

 自然災害、都市開発、環境破壊などで地域のコミュニティが解体の危機に瀕するなか、人々が自発的に参画し、一体となってひとつの目的を実践することの意義を提示する加藤。その作品は、現在のパンデミックという状況下、また国家や国民の二極化が世界的に危惧されるなか、分断や対立を超えた協働作業や連帯による可能性を改めて気づかせてくれるだろう。