EXHIBITIONS

御大典記念 特別展 よみがえる正倉院宝物

―再現模造にみる天平の技ー

2021.07.03 - 08.29

模造 螺鈿紫檀五絃琵琶 正倉院事務所蔵

模造 銀薫炉 正倉院事務所蔵

 特別展「よみがえる正倉院宝物 ―再現模造にみる天平の技―」が新潟県立近代美術館に巡回する。

 正倉院宝物とは、奈良・東大寺の倉であった正倉院正倉に伝えられた約9000件におよぶ品々のこと。聖武天皇ゆかりの品をはじめ、その多くが奈良時代の作で、華やかな天平文化や当時の東西交流もうかがい知ることができる。

 しかし、約1300年を経て今日にいたる正倉院宝物は、きわめて脆弱であるため、毎年秋に奈良で開催される「正倉院展」で一部が展覧される以外はほとんど公開されてこなかった。

 正倉院宝物の魅力をより多くの人に伝え、その卓越した技術を後世に伝承することを目的として、正倉院宝物の当初の姿を再現する模造製作が明治時代から始まった。1972(昭和47)年からは宝物を管理する宮内庁正倉院事務所によって、宝物の材料や技法、構造までを忠実に再現する本格的な模造事業が行われている。

 重要無形文化財保持者(人間国宝)らの熟練の技と、最新の研究成果との融合によって生み出された作品は、見た目だけでなく、内部までをも忠実に再現しており、たんなる模造にとどまらない、高い芸術性と学術性を併せ持つ究極の伝統工芸品であると言える。

 本展は、天皇陛下の御即位をはじめとする皇室の御慶事を記念し、これまでに制作された数百点におよぶ再現模造作品のなかから、選りすぐりの逸品を一堂に集めて公開。再現された天平の美と技にふれ、日本の伝統技術を継承することの意義を考える機会としたい。