EXHIBITIONS

青木豊「窓と行進」

2021.06.05 - 07.10

青木豊 Untitled 2021 Photo by Keizo Kioku © Yutaka Aoki Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

青木豊 Untitled 2021 Photo by Keizo Kioku © Yutaka Aoki Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

青木豊 Untitled 2021 Photo by Keizo Kioku © Yutaka Aoki Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

青木豊 Untitled 2021 Photo by Keizo Kioku © Yutaka Aoki Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

青木豊 Untitled 2021 Photo by Keizo Kioku © Yutaka Aoki Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

 青木豊は1985年熊本県生まれ。2008年に東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻を卒業後、10年に同大学院造形研究科美術専攻領域を修了。絵画の視野を広げ、世界と絵画の関係とその可能性を追究している。

 これまで、二次元と三次元を自由に行き来するような作品や、素材の物質性や制作方法自体、そして鑑賞者の視線の動きの相互反応にフォーカスした作品を発表。また昨年の個展「INTO THE AIR」では、刻々と変わる絵画の豊かな表情を、時間軸で瞬間としてとらえることを試みた。実験と新たな発見のプロセスを繰り返すことによって、青木はつねに絵画そのものを再発見している。

 本展のキーワードは「窓」。窓は内から外を見る、そして内、あるいは穴のなかのものが外に露出する際の境界として作用する。また物質と精神をつなぐもの、環境と人を取り持つ存在を象徴する。青木は今回、絵画の持つ「窓」としての要素にアプローチし、次のような言葉を寄せている。

「窓はあらゆるものを運び、環境に対して僕たちを仲介する。かたち取られた現象はそのまま意識の境界となってまぶたの裏側に届く。この展覧会では情報と盲目について考える。

四感をとおして世界を理解しようとする人々の生が描かれた小説『白の闇』(ジョゼ・サラマーゴ著、原題『Ensaio sobre a cegueira』)。この本では、人々からみる世界はのっぺりと白く平坦なものへ均される一方、世界からみる人々はささくれのように毛羽立ったものとして存在している。

 普段僕たちは光をとおして環境を知る。環境によって僕たち動物は与えられた価値を享受しているが、この本では光が失われることにより環境と動物の関係が反転している。作中の人々は情報の確からしさを理解しようと無から環境を彫刻するように活動する。世界もまた毛羽立っている(本展ステイトメント)」。

 光への眼差しは、一貫して青木の制作の中心にあるもの。作家はとくにその立体化(光が時間軸、鑑賞者の存在、展示空間などの環境の要素に補完され、有機的に立ち上がるような豊かさ)を追究してきた。本展のステイトメントでは、その光が失われた世界が言及されている。

 光がつねに与えられていることは、自明ではないということ。またその盲目のなかで、確からしさを求める動物としての人間の姿が想起されているのは、現在私たちが経験している不確実性を、またその不確実性はいまに始まったことではないということを、青木は本展の新作で示唆しているようだ。