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パープルームの呼び声

本展イメージビジュアル

パープルーム予備校の様子

パープルストリート

 パープルームギャラリーでは、「パープルームとは何か」という問いを中心とした展覧会「パープルームの呼び声」を開催する。

 2014年に結成された美術の共同体「パープルーム」は、18年に相模原市にパープルームギャラリーをオープン。段ボール製の移動式ギャラリーを、ホワイトキューブのギャラリーとして生まれ変わらせた。

 パープルームギャラリーの特徴のひとつは、運営を専属のギャラリストやスタッフではなく、パープルームのメンバーが担っていること。そこで行われる展覧会はたんに作品を見せる場ではなく、観客とパープルームのメンバーが直に交流する場でもある。またノイズの少ない空間で作品を鑑賞するよりも、時に訪れた観客との挨拶や会話に重点を置くなどすることで、観客の層を広げてきた。

 パープルームギャラリーの展覧会では毎回テーマを設定し、作品や企画の意図を丁寧に解説してきたが、本展はこれまでと違い、手書きでレタリングされた数枚の「フラッグ」のみで構成する。

 標語のような文言や不可解な宣言文や擬音語などが書かれたカラフルな布は、展覧会のみならず普段からパープルーム予備校などに掲げられており、フラッグに書かれたメッセージの出典元はメンバーのツイートやその場の思いつきを採用することが多いと言う。フラッグに書かれた言葉たちはもともとの意味や文脈から切り離され、別の意味や解釈を受け入れる余剰と抽象性を獲得する。しかし、それらからはコンセプチュアル・アートで使われる言語のような厳密さや清潔なユーモアは感じられない。

 パープルーム主宰の梅津庸一は現在、陶芸作品の制作のため、滋賀県信楽町に滞在中だ。物理的にパープルームのある相模原から離れることで、「パープルーム」という存在について改めて考えるようになったと語る。

 陶芸の素材でさる粘土は一定期間寝かせることで微生物や雑菌が繁殖し、粘土に粘り気や可塑性を与えることが知られている。梅津は、パープルームのフラッグには粘土における微生物のようなものが含まれているように思うとしながら、「本展がパープルームという主体を問うものである以上、そこには安定的ななにかが存在しているはずもなく、日々移ろいゆくパープルームの不定形が『ぐにゃん』と横たわっているのだ」と述べている。