EXHIBITIONS

六田知弘「時のイコン 2021」

2021.03.11 - 03.26

2012.5.30 宮城県気仙沼市

2012.11.9 福島県楢葉町

2013.5.4 福島県楢葉町

 東日本大震災から10年となる3月11日より、√K Contemporaryでは写真家・六田知弘の個展「時のイコン 2021」を開催する。

 六田は1956年奈良県生まれ。80年早稲田大学教育学部卒業。82年よりネパールヒマラヤ山中のシェルパの村に暮らしながら撮影し、88年に最初の個展「ひかりの素足―シェルパ」(新宿ニコンサロン、東京)を開催。以降、「自然や宇宙との根源的なつながり」を遠くに探りながら、モノ、人物、風景、建築、道、石など様々な事象を対象に撮影し、写真展や出版を通じて発表している。また、「祈り」と「時」をキーワードに、仏像などの日本美術、ヨーロッパのロマネスク美術、雲岡石窟やボロブドゥールなどアジア各地の仏教遺跡といった、文化財や古美術品の撮影も多い。

 本展では、六田が震災後、津波に流され地面に残されたものたちや、福島第一原発の周辺地域で撮影した写真を展示。本展で紹介する作品群は、これまで国内外の美術館などで展覧され、また写真集『時のイコン 東日本大震災の記憶』(平凡社、2013)として出版されて、多くの人に衝撃と感動を与えてきた。本展では、写されたモノたちが置かれていた当時の姿を想起させるように、会場内には砂や小石、水槽を設置する。

 津波に流され、時を経て新たな「生」が芽生えた小さな靴。福島第一原子力発電所の傍で力強く咲く桜。記録されたものたちには時間とともに新たな「生」が息吹き、それらはある種の美しさをも伴って輝きを放つと同時に、自然の脅威を改めて感じさせる。

「被災地で見つけたモノを、持参した白い紙の上に置いて撮った。『モノの記憶』をカメラで記録した。モノには時間が堆積している。被災する前にそれらを生活のなかで使っていた人たちの時間、3.11の津波の瞬間の時間、そして3.11以降、撮影されるまでの時間が堆積している。写されたモノたち自身が語る声に耳を傾けてほしい。白紙の上に載せて撮ったのは、より鮮明にモノたちの声を聞くためである。その声を記録し、伝えることが、写真家としての私の仕事だと考えた。私は鎮魂と祈りの気持ちを込めて、それらモノたちの写真を『時のイコン』と名づけた(六田知弘)」。

 本展の収益金の一部は、東日本大震災復興支援金として寄付される。