EXHIBITIONS

⼸指寛治「マジック・マンチュリア(導⼊)」

弓指寛治 イモ畑で雑草を抜く 2021 © Kanji Yumisashi

 ⾃死や慰霊をテーマに制作を続ける画家・⼸指寛治の2年ぶりとなる個展「マジック・マンチュリア(導⼊)」が開催されている。

 ⼸指は1986年三重県⽣まれ。名古屋学芸大学⼤学院修了後、学⽣時代の友⼈と名古屋で映像制作会社を起業。2013年に代表取締役を辞任し上京、作家活動を開始した。

 ゲンロンカオス*ラウンジ新芸術校の第⼀期⽣として学んでいた15年に、交通事故後で⼼⾝のバランスを崩していた⺟親が⾃死。出棺前に「⾦環を持った⿃のモチーフ」が浮かび、以後制作される多くの作品で繰り返し登場する作家の表現の核となっている。

 18年には、約30年前に⾃死したアイドルをテーマにした《Oの慰霊》が「第21回岡本太郎現代芸術賞」敏⼦賞を受賞。同年、《Oの慰霊》の続編的な位置づけの展覧会「四⽉の⼈⿂」を開催。近年はあいちトリエンナーレ2019に参加し、実際に起きた自動車事故を題材とした《輝けるこども》で注⽬を集めた。VOCA佳作賞受賞作家として、「VOCA展2021 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」への出展を予定している。

 本展は、2021年から開始される⼸指の新たなプロジェクトのプロローグ。満洲開拓⺠として渡満していた祖⽗の死をきっかけに構想され、1932〜1945年まで存在していた満洲国を巡る様々な⽴場の⼈間、満洲での事件などをモチーフにしながら、⼸指の制作の中⼼にある死と慰霊、被害と加害について考える作品をつくっていこうという試みのスタートを切る。