EXHIBITIONS

<企画展>田島征三展『ふきまんぶく』

―それから、そして、これから―

2020.09.04 - 11.30

田島征三 『ふきまんぶく』(偕成社)より 1973 ちひろ美術館寄託

田島征三 『ふきまんぶく』(偕成社)より 1973 ちひろ美術館寄託

田島征三 『つかまえた』(偕成社)習作 2020 個人蔵

 安曇野ちひろ美術館は、今年4月の臨時休館に伴い終了した企画展「田島征三展『ふきまんぶく』―それから、そして、今-」に、田島の「これから」の視点を加えて再開する。

 田島は1940年大阪府生まれ。62年に手刷り絵本『しばてん』を制作し、65年に初めての絵本『ふるやのもり』を出版。69年より東京の日の出村(現・日の出町)で農耕生活を営み、ごみ処分場建設反対運動など次世代の命を守る闘いに関わる。その後、同地での体験をもとに、絵本『やまからにげてきた・ゴミをぽいぽい』を制作する。

 98年より伊豆半島に移住し、木の実など自然の素材を用いた作品も発表。2005年より、田島らの発案で、韓国、中国、日本の絵本画家たち12名による平和絵本プロジェクトを開始し、戦いで失われていった命を描いた『ぼくのこえがきこえますか』を通して、戦争の愚かさを表現した。

 09年、新潟県十日町市鉢集落の廃校を「空間絵本」にし、「絵本と木の実の美術館」として開館。13年には、香川県大島にてハンセン病患者の元療養所で、入所者が暮らしていた建物を丸ごと「空間詩・青空水族館」に改築する。『ちからたろう』でBIB金のりんご賞(1969)、『ふきまんぶく』で講談社出版文化賞絵本賞(1974)を贈られるなど、多くの賞を受賞している。

 本展では、自然豊かだった東京都日の出村での生活体験がもととなった絵本『ふきまんぶく』を起点に、田島が描く生命の表現の軌跡を紹介。今春に展示された『ふきまんぶく』の原画やスケッチなどに加え、少年時代の命との出会いを絵本にした新作の絵本『つかまえた』(2020)、また近年に描かれた絵本以外の作品も含め、多様な命を泥絵具で表現し続けている作家のいまとこれからを伝える。