EXHIBITIONS

石塚元太良「Gold Rush California / NZ」

2020.07.11 - 08.29

石塚元太良 Gold Rush California #001 2019 / 2020 © Gentaro Ishizuka

石塚元太良 Gold Rush California #002 2019 / 2020 © Gentaro Ishizuka

石塚元太良 Gold Rush California #004 2016 / 2020 © Gentaro Ishizuka

石塚元太良 Gold Rush New Zealand #002 2016 / 2020 © Gentaro Ishizuka

石塚元太良 Gold Rush New Zealand #003 2016 / 2020 © Gentaro Ishizuka

 極地方のランドスケープを大判フイルムカメラで撮影してきた写真家・石塚元太良の個展がKOTARO NUKAGAで開催される。

 石塚は1977年東京生まれ。10代の頃から世界を旅し始める。1999年にバックパッカー旅行で、アフリカとアジアを縦断しながら撮影した『Worldwidewonderful』(Gallery Niepce、2001)でエプソンカラーイメージングコンテスト大賞を受賞。2002年、世界を東・西回りで2周しながらデジタル画像の位相をとらえた『Worldwidewarp』(ビジュアルアー ツ、2001)でヴィジュアルアーツフォトアワード日本写真家協会新人賞を受賞した。そして2006年の、アラスカのパイプラインを撮影したシリーズ『Pipeline Alaska』(プチグラパブリッシング、2007)の写真集と同名展覧会が出世作となる。

 最新作は『GOLD RUSH ALASKA』(Steidl、2021年に刊行予定)。ドキュメンタリーとアートの境界を横断するように、ランドスケープが詩情的なイメージを想起させる独自のスタイルは「コンセプチュアル・ドキュメンタリー」と評されている。

 本展は、2016年以降に撮影された「ゴールドラッシュ」シリーズで構成。ゴールドラッシュは1848年にアメリカ・カリフォルニア州で始まった現象であり、一攫千金を狙う多くの人々が金脈を追って移住した結果、アメリカの経済や人口移動に大きな影響を及ぼした。

 石塚の探究は2011年、アラスカ全土に点在するゴールドラッシュの遺物を撮影したことに始まる。パイプラインや氷河という、ランドスケープのなかで自ら選んだ被写体を追い続けるアラスカの地で石塚が発見したのは、訪れる街の多くがゴールドラッシュに由来し、現代のアラスカの下には「ゴールドラッシュ」という歴史的地層が横たわっていることであった。

 雄大な山々や川というおよそ150年前とほとんど変わらないランドスケープとは対照的に、かつて栄えた街に残る廃墟。歴史的な出来事の背景には、風土に根ざした一人ひとりの細やかな営みが存在し、重層性と時事性をもって歴史をひも解いた時に目の前に新たな景色が開ける感覚を、石塚は写真という手段でとらえようとしている。

 本展では、「ゴールドラッシュ」の発祥の地であるアメリカ・カリフォルニア州、さらにはニュージーランドへと、異なる時と場所からのアプローチを続けている同名シリーズの新作を展示。辺境地を切り開き、土地を掘り尽くした歴史の残像からは、夢や情熱の儚さやいつの時代も変わらぬ人間の業といった側面も見て取れる。100年前そして100年後という遥かなる時と遠い場所に思いを馳せるきっかけとしたい。