Chim↑Pom 個展「May, 2020, Tokyo / A Drunk Pandemic」

　ANOMALYは緊急事態宣言解除後最初の展覧会として、Chim↑Pomによる「May, 2020, Tokyo / A Drunk Pandemic」展を開催。本展はタイトルが示す通り、ふたつのプロジェクトで構成される。

《May, 2020, Tokyo》は、東京2020オリンピック・パラリンピックが新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大を受けて延期となり、その後発令された緊急事態宣言下の5月、東京を舞台にしたプロジェクト。つねに街中でプロジェクトを敢行してきたChim↑Pomが、「Stay Home」という自粛要請が謳われた首都東京で、改めてその瞬間の街に目を向け制作した作品によるインスタレーションを発表する。

　いっぽう《A Drunk Pandemic》は、2019年にイギリス・マンチェスターのヴィクトリア駅地下にある、巨大な廃墟のトンネルで行ったプロジェクトに依るもの。マンチェスター・インターナショナル・フェスティバル（MIF）の一環として制作・発表され、『ArtReview』誌（2019年9月）の表紙を飾り大きく特集された、日本では未発表のプロジェクトだ。

《A Drunk Pandemic》では、Chim↑Pomは、コレラで亡くなった人々が埋葬されたマンチェスターの地下（現・ヴィクトリア駅地下）の廃墟に「ビール工場」を設置し、オリジナルビール「A Drop of Pandemic」を醸造。コレラや酵母といったバイオ的なプロセスを可視化し、それらと下水道などの街のインフラにまつわる歴史的な関係を文脈とした、Chim↑Pomの「都市論」として展開された。この忘れられた地下の廃墟から密かに増殖するビールやブリック、酔っ払いたちがプロジェクトを通じて放たれ、「ノン-サイト（Non-Site）」であるギャラリーでのインスタレーションとして結実する。

　ペストの媒介者として嫌われてきたネズミのなかでも、都市で繁殖し殺鼠剤が効かなくなるほど進化した「SUPER RAT」を自分たちの肖像としてとらえ、また死の使いとして畏怖されるカラスを題材にした作品に、「BLACK OF DEATH」と黒死病を想起させるタイトルをつけてきたChim↑Pom。本展のふたつのプロジェクトは、Chim↑Pomにとって疫病と資本主義社会、そして都市の関係に触れてきた一連の流れにある。

　Chim↑Pomの「都市論」は、公から個という昨今の東京のまちづくりに反して、個から公への回帰と刷新を念頭に置いた2018年のANOMALYでの個展「グランドオープン」からさらに発展し、移動が過度になったグローバリズムの最中にある「都市そのもの」と「人間のあり様」を示す。