EXHIBITIONS

百瀬文「I.C.A.N.S.E.E.Y.O.U」

EFAG EastFactoryArtGallery
2019.12.07 - 2020.01.18

百瀬文 Jokanaan 2019 video still

百瀬文 Jokanaan 2019 video still

 身体と声の問題を扱った映像作品で知られるアーティストの百瀬文が、日本では3年ぶりとなる個展を開催する。

 百瀬は1988年東京都生まれ、武蔵野美術大学大学院造形研究科修士過程修了。パフォーマンスを記録するための方法として映像を用い始め、現在は撮影者と被写体の関係性のゆらぎを映像自体によって問い直す作品を制作している。2016年度アジアン・カルチュラル・カウンシルの助成を受けてニューヨーク、その後ソウルに滞在。19年には、イム・フンスンと共同制作した『交換日記』が全州国際映画祭(JIFF)に正式招待されるなど、国内外で活躍している。
 
 本展は、眼差しを通して主体のありかや感情の揺らぎを探る試み。見る者と見られる者の非対称性、また他者とのすれ違いといった問題を、眼の動きや視覚言語などの身体的動作から考察した新作3点を発表する。

 本展の中心となるのは、モーションキャプチャー技術を使用し、踊るダンサーの実写とそこから生成されるCG映像からなる2チャンネルビデオ・インスタレーション《Jokanaan》。オペラの『サロメ』を題材とする同作品は、「見られる」ことを欲望し情動的に舞う身体と、その動きを「見る」視線を交錯させ、眼差しをめぐる主体の攪乱を図る。

 他方、展覧会タイトルと同名の《I.C.A.N.S.E.E.Y.O.U》は、「I can see you」の文章をモールス信号に変換し、カメラに向かって作家自身がまばたきによってメッセージを送り続ける映像作品。そしてもう1点、過去の恋人との会話を回想する、ろう女性をとらえた映像作品を発表する。

 自身の女性という身体とアイデンティティに向き合い、対象との対等な関係を模索してきた百瀬。本展では、視覚を中心に構築されてきた社会構造や規範に疑問を投げかける。