EXHIBITIONS

青山悟展「The Lonely Labourer」

青山悟 News From Nowhere(Labour Day) 2019 撮影=宮島径 ©︎ AOYAMA Satoru Courtesy of Mizuma Art Gallery

青山悟 The Lonely Labourer 2018−19 ©︎ AOYAMA Satoru Courtesy of Mizuma Art Gallery

 青山悟は1973年東京都生まれ。イギリスの大学でテキスタイル・アートを専攻し、そこでシンガー社製の古いミシンに出会って以来、機械と人間の関わりや時代によって変化する労働のあり方など、ミシンにまつわる言語を考察しながら刺繍作品の制作を行っている。

 2年ぶりの個展となる本展は、刺繍と映像によるインスタレーション《8HOURS》や、シルクスクリーンに刺繍を施した新作《News From Nowhere(Labour Day)》、古い工業用ミシンによる制作で知られる作家が初めて試みた、コンピューターミシンを用いた作品《The Lonely Labourer》によって構成される。

《8HOURS》は19世紀イギリスの実業家、社会改革者ロバート・オーウェンのスローガン「仕事に8時間を、休息に8時間を、やりたいことに8時間を」に着想を得たインスタレーション。青山はこのスローガンを現代の自分の状況に置き換え、実践を交えて考察する。

《News From Nowhere(Labour Day)》は19世紀のニューヨークで行われた「労働者の日」の風景に、近年世界で起こったデモや活動の旗と共に作家自身の活動のスローガンを謳った旗を加え、さらにインターネットから拾ったアートや映画、音楽などのカルチャーを織り込んだ、現代の風刺画と言えるものだ。

 そして本展のタイトルでもある《The Lonely Labourer》は、コンピューターミシンが全自動で刺繍する様子を映像に収めた作品。映像のなかで、コンピューターミシンが19世紀アーツアンドクラフツ運動の創始者・社会主義者ウィリアム・モリスの手紙の文面にある「浪費」「個人」「階級」「競争」といった言葉を淡々と刺繍していく。

 青山は美しく精巧な刺繍の奥に、風刺とユーモアを内包するこれらの作品を通して、「急速なテクノロジーの進歩と共に変容していく社会のなかで、人間性や美意識、芸術そのもののありかは一体どこにあるのか」という問いを提示。また、未来における労働のあり方と自身のこれからについても疑問を投げかける。