EXHIBITIONS

マリオ・ガルシア・トレス「Falling Together In Time」

“I Painted This Monochrome While Listening to Van Halen's Jump” at the artist studio in Mexico City © Mario García Torres

 メキシコ・シティを拠点に活動する1975年生まれのアーティスト、マリオ・ガルシア・トレス。これまで、アートと大衆文化において探究されてこなかった歴史の側面に着目し、映像、写真、立体を含む多様なメディアを用いてその隙間を詩的に綴ってきた。作品においては、事実とフィクションとのあいだに平行関係を導き出し、また両者の対話を演出。記憶や理解に潜む曖昧さや食い違いを浮かび上がらせ、社会が直面する問題よりもさらに広範囲な課題に対する再考を促している。

 本展は、81年のロサンゼルスで、ボクサーのモハメド・アリとロックミュージシャンのエディ・ヴァン・ヘイレンの周辺で起きた、2つの出来事にまつわるビデオ作品を発表。哲学とポップ・カルチャーを織り交ぜながら、偶然はやがて一致するという、人生の多面性を説く。

 会場には、増田哲治の協力を得て制作されたアナログシンセサイザーや、ビデオ作品のコンセプトから着想を得た複数のペインティング、そしてヴァン・ヘイレンの来日時の記録文書を展示し、作家が「ミュゼオグラフィカル・エッセイ(美術館・博物館の展示形式を用いた視覚的エッセイ)」と呼ぶ空間を出現させる。