EXHIBITIONS

元永定正、中辻悦子「記憶の残像」

2025.02.14 - 04.04

Sadamasa Motonaga The Shapes Above are White 1993 acrylic on canvas 24 1/8 × 20 × 7/8 inches,
Etsuko Nakatsuji Signal [Aizu]—eyes—Shape of Human・Line 2002 acrylic on canvas 35 7/8 × 28 3/4 × 1 inches

 BLUM 東京で、元永定正と中辻悦子の展覧会「記憶の残像」が開催されている。

 1960年から夫婦となった元永と中辻は、元永が2011年に他界するまで、時に共同で、時に個々の活動を通じて、戦後日本の前衛芸術活動の発展に大きな貢献を果たした。

 1950年代に結成された具体美術協会の創設メンバーとして長く敬されている元永は、鮮やかな色彩を駆使した絵画、廃材を用いた実験的作品、また絵本の制作などを通し、生命の哀愁を遊び心に満ちた表現で描き出した。

 元永とともに活動するなかで、中辻の歩みはフルタイムのグラフィックデザイナーとして始まった。寝具の余った布を使用したオブジェ制作に取りかかり、「ポコピン」と呼ばれる人形(ひとがた)のオブジェを自宅の天井に吊るし、初期作品として完成。

 両者の絵画作品はいずれも抽象的だが、どちらも人間の知覚や身体性に深く関わった表現とされる。元永の後期作品は、そのグラフィカルな表現のなかで、曖昧とした知覚の幻影を追求する要素が感じられるが、このテーマは中辻自身も長年にわたり取り組んできた。元永が具象表現へと展開し、中辻が絵画制作に回帰するなかで、両者は世紀の変わり目において共鳴しながら作品を生み出した。