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加藤巧、山脇竹生「光を練り合わせる —絵画と科学の対話から」

2025.01.18 - 02.09

加藤巧 Painter’s Desk 2024 顔料、卵黄、ライ麦粉、乾性油、アクリル樹脂、Jesmonite AC100、二水石膏、膠、亜麻布、木材 600 × 1200 mm

 BankART Stationで、加藤巧、山脇竹生による展覧会「光を練り合わせる —絵画と科学の対話から」が開催されている。

 以下、本展のステートメントとなる。

「私たちは、意識しないうちに本来切れ目のない世界に切れ目をつくって日々を過ごしています。学校での学びは『科目』に分けられ、毎日のニュースは出来事の『断片』に限られ、仕事は『分業』が進められています。これらは確かに効率よく学んだり、情報を得たり、専門性高く働いたりするメリットをもたらしました。しかし、『分けられたもの』ばかりに頼っていると、失われてしまう大事な視点があるように思います。昔の画家は、絵の描き方だけでなく、描くときに使う材料・画材に関する知恵を深く結びつけながら絵画を制作していました。それが近代になると画材をつくる人と画家との役割分担が進み、画家は絵具づくりに時間を使うことなく、絵を描くことに専念できるようになりました。その反面で、かつての画家たちが持っていた『自らが使う材料への深い理解』にもとづく絵画づくりといった方向へは発展しにくくなったと言えます。現代では、こうしたあらゆるものを『分けていく』強い流れを問題ととらえて、分けられ、細かくなった断片を結びつける『学際融合』や『共創』といった活動が行われ、新しいアイデアが生まれるようになってきています。

 そのような流れのなかで、古今の材料を検討しながら作品制作を行うアーティストの加藤巧と、化粧品で使われる色材を研究する山脇竹生が協力し、かつての画家の工房がそうであったように、材料への理解を進めながら、表現と研究に対し、いま何ができるかについて考えを進めてきました。私たちはこのプロジェクトで、化粧品に使われる『パール剤』という材料がもつ『見る人との位置で見え方を変える』という特徴に着目し、これを共通の材料として互いの知識を交換し、交流を進めてきました。この企画では、芸術と科学がどう交わり、新しい発見が生まれていくかを展示形式で紹介します。パール剤の歴史を紐解き、観察のもととなる真珠とのつながりをみつけ材料に意味性をもたせました。パール剤の発色原理からは、この材料自身が色を発する光の粒であることを理解し、光を練りあわせるように絵具を調合し、実験し、これまでのパレットに加えていきました。

 パール剤は見る人との位置関係で見え方を変える材料です。美術の位置から、科学の位置から共通の材料を眺め共有することで、それぞれの知識や経験、手仕事を再集合させるための象徴となりました。本展を通じて、かつて分かれてしまったものをもう一度つなげながら、これからの私たちが関わりあいのなかで何ができるか、ともに考えていくきっかけとなれば幸いです」(展覧会ウェブサイトより)。