張景翔「遥かな川」

　ソニーイメージングギャラリーで、張景翔による個展「遥かな川」が開催されている。

　張景翔（ちょう・けいしょう）は中国河南省出身。東京都在住。2020年上海交通大学卒業。2024年多摩美術大学大学院写真研究室卒業。

　本展に際して、張は次のように述べている。

「私の故郷は中国の中原地方にある小さな町である。ほとんどの人はその町を知らず、そこでは丘にも小川にも名前がない。

　3年が経ち、久々に故郷に戻ってきた。都市の建設により、至る所に新しい高層ビルや建築現場などがたくさん見える。城下町に立って遠く見渡すと、周りの高層ビルが波のように、私の故郷の思い出をじりじりと飲み込んでいた。人々は渡り鳥のように、変化する環境のなかで、新たな巣を求めている。

　昔、祖母はその町の西に住んで、30年間を過ごした。2015年、新しい住宅地を開発するために、この地域の建物がすべて取り壊されていた。しかし、8年が経って、ここはまるで忘れ去られた場所のようで、ずっと廃墟のままである。お年寄りは住みなれた土地から離れがたいのに、祖母は仕方なく3回引っ越した。

　故郷に戻ってきた私は、この町に見慣れないものを感じたが、いまなお無意識に記憶のなかで馴染みのある人々や物を探していた。そして、別れの気持ちを抱きながら、写真を撮って記録しようとした。

　故郷とは、いったい何だろうか。もし慣れ親しんだ風景が消え去ったら、故郷はまだ存在するだろうか。

　それとも、記憶のなかで名のない小川のように消え去っても、私が到達できない遥か彼方までそのまま流れていくだろうか」（展覧会ウェブサイトより）。