EXHIBITIONS

キム・ウジン「Silent Speaking」

2024.07.20 - 08.03

And, I decide to make a short play- part U 2024 video installation, 2 channels, color, sound 21min00sec © Woojin KIM

 GALLERY MoMo Ryogoku で、キム・ウジンによる個展「Silent Speaking」が開催される。

 キム・ウジンは1976年生まれ。2012年にロンドン大学ゴールドスミス・カレッジファインアート学科を修了し、2019年には梨花女子大学博士課程を修了。韓国、台湾、香港などで個展を開催するとともに、アーティストレジデンス・黄金町(横浜)、Tokyo Arts and Space(東京)、MMCA Goyang Residency(国立現代美術館、京畿道・韓国)などの多くのレジデンスプログラムに参加してきた。

 キムはレジデンスプログラムなどに参加しながら、コミュニティに一定期間身を置き、その社会のなかに隠れているフレームやそれが機能する社会的条件を探り、それが個人にどのような影響を与えているかを観察。これを社会的、歴史的文脈のなかでたどりながら、個人の記録を集め作品にしてきた。キムは「私たちが固く信じている『良い / 悪い』『本当 / 嘘』といった概念にヒビを入れたい」と語り、無自覚であった社会的通念を自覚させようとしている。

 本展では、キムの代表的なプロジェクトである「Memories Project」から《The Prelude of The Perfect Ending》、《The Ghost, Sea and Moebius Loop》のシリーズに加え、北海道と沖縄の少数言語であるアイヌ語とウチナーヤマトグチを題材とした新作《And, I decide to make a short play》を展示。

 《The Prelude of The Perfect Ending》は、台湾や韓国の済州島、香港などで話される少数言語について、様々な世代へのインタビューをもとに制作された音声映像作品。作品中には、実際に話している人の顔は映し出されず、人の手で粘土のようなものが練られて型にはめられていく様子が映し出されている。これは、私たちが生活のなかで固定概念が形成されるプロセスに似ており、個人が自身の経験を通して語る言語変化の過程を通じて、私たちのなかにつくられた枠組みや境界線を意識させ、その枠組みをつくるものとは何かを問いかけている。

 こういった消えゆく言語を研究するなかで、キムは少数言語がインターネット上で翻訳されないことに気づいたという。デジタル化によってさらに淘汰される言語と都市への人口集中によって失われる地方都市の状況を重ねあわせた《The Ghost, Sea and Moebius Loop》を制作した。

 新作の《And, I decide to make a short play》では、日本の少数言語であるアイヌ語とウチナーグチを話す人々へのインタビュー音声をもとに構成され、別個に行われたインタビューをつなぎあわせることで短い演劇をつくった。