幻想のフラヌール　―版画家たちの夢・現・幻

　町田市立国際版画美術館で「幻想のフラヌール　―版画家たちの夢・現・幻」が開催される。

　ときに鏡にたとえられる版画は、作者の夢想と観者の願望を如実に映し出す。版面／紙面の不可思議なモチーフや奇妙なフォルムは想像力を刺激し、見慣れた現実をも幻想の世界に変容させる版画家たちの精神と手業は既成の概念を揺り動かす。

　独自の世界を彷徨う「フラヌール（遊歩者）」ともいうべき版画家たちの作品は、過去や私たちの内に眠る原初的な記憶を呼び起こしながら現実世界の可能性、未来の姿を浮かび上がらせる力を秘める。

　本展では、企画協力に美術評論家の相馬俊樹を迎え、幻想の力によって「アナムネシス（記憶回復）」を喚起する作品を、同館収蔵品から紹介。版画／鏡を覗きこみながら作品のあいだを遊歩するうちに自ずと取り込まれる世界は、「夢幻」と「現実」、「作品」と「私たち」、そして「芸術のための芸術」と「生のための芸術」などの境界がとけあう場となる。