山中雪乃「POSE」

　DIESEL ART GALLERYで、山中雪乃による個展「POSE」がギャラリー・CON_のキュレーションにより開催されている。

　山中は、これまで人間の物質としての輪郭と現象としての状態に注目し、そのあわいに蠢く不定形で非人間的な存在を描いてきた。初期より一貫して人物をモチーフとし、そのスタイルは具象的な描画からランダムなストロークを用いた抽象的な描画へと変化していった。白飛びのような情報を欠いた空白、身体の隙間にだらりと流れる液体、セルフィーやアーティスト写真を思わせるエゴイスティックな表情やポーズ。それらが画面全体へ溶け込むように描かれることで、「私」から「何か」への変異のプロセスそのものをとらえ、これまでの人間像から脱しつつある未完の存在をあらわにしている。

　本展のタイトル「POSE」とは、絵画や彫刻で象られるモデルの姿勢のほかに、見せかけの態度、うわべだけがあるといった状態も意味する。本物と見せかけかを判断できないまま、定まらないポーズを繰り返す状況で生まれる得体の知れない何か、感知の外にある不可視の存在が表現されている。本展では、新作の絵画作品12点と初の立体作品を通じて、現代における絵画と空間の関係を問い、失われつつある絵画の実在性、そこに宿る他者の存在に接近する。