EXHIBITIONS

淵上裕太 写真展「上野公園」

2023.12.01 - 12.23
 禅フォトギャラリーで淵上裕太の写真展「上野公園」が開催されている。

 淵上は1987年岐阜県生まれ、2014年に名古屋ビジュアルアーツ写真学科を卒業。19年、20年、21年と3年連続で清里フォトアートミュージアムに作品が収集される。22年に塩竈フォトフェスティバルにてグランプリを受賞し、2023年に写真集『上野公園』を同フェスティバルより刊行。現在、東京都写真美術館にて開催中の「見るまえに跳べ 日本の新進作家 Vol.20」展にも参加している。

 禅フォトギャラリーで初となる本展では、淵上が上京してから数年間のあいだに撮影した初期のモノクロ作品を展示する。本展に際し、以下のステートメントを発表している。

「上野にはじめて訪れたのは15年の夏だったと思う。東京に上京して間もない頃、気になる場所を訪れて、隅から隅まで歩き、人に声をかけてポートレート写真を撮影した。その時は、人以外にシャッターを押すことがなかったので、撮影する場所はどこでも良いと考えていた。その頃、東京という場所で自分の撮りたい対象が多くいる場所を見つけるのが難しかったように思う。

 上野駅を降りて、はじめて感じたのは「しょんべんくさい」という印象で、生きている匂いがした。これは私が東京ではじめて感じたもの。駅前には数人のホームレスが寝転がっていた。私はいつものように隅々まで1日歩き、夕日が落ちてきた頃に偶然上野公園の不忍池を見つけ、その光景に圧倒され、枯れた茶色に染まる池は死を感じた。それ以降、上野公園は私の東京で一番好きな場所となり、撮影する場所になった。

 展示した作品は、15年から19年まで上野公園を歩き、モノクロフィルムで撮影した写真だ。モノクロ写真は私にとって一番好きなもので、色がないことで長時間見ていられ、写真に静けさや哀愁が漂う。私の写真が人間が何者であるかや生きる意味などを伝えることは難しいですが、人々がこの場所で美しく生きているという事実を記録し続けたいと思っている。人間は非常に醜く、同時に美しい存在。様々な人がいて、強く強く生きている。それだけで非常に美しく、私の心を引き寄せ離さない」。