前田哲明 ｢Recent Work 2023｣

　gallery21yo-jで、前田哲明による個展 ｢Recent Work 2023｣が開催されている。

　前田は1961年東京都生まれ。91年東京芸術大学大学院博士課程修了後、文化庁の芸術家在外研修制度による研修員としてロンドンに1年間在住した。前田はこれまで、手の痕跡が素材に映し出されることを極力避けようとは思わず、むしろ表現の一環として制作に向き合ってきた。しかし近年知らず知らずのうちに手の痕跡を最小限にとどめることで素材の特性を活かすような方法にシフトしている。

　鉄を素材とする作品にとって手の痕跡とは溶接を重ねることにほかならず、どこか塑像の粘土づけにも通づる点がある。この手作業の一環としての溶接を重ねるうちに、前田は酸化被膜のない素肌の鉄板に伝わる溶接の痕跡の色が、紙面に染み込むインクとオーバーラップする時があることに気づいた。

　本展では、旧作にあわせ新作の立体とドローイングを発表する。