EXHIBITIONS

毛利悠子「Neue Fruchtige Tanzmusik」

2022.11.02 - 12.03

展示風景より

 Yutaka Kikutake Galleryでは、毛利悠子の個展「Neue Fruchtige Tanzmusik」が開催されている。

 毛利は1980年生まれ。2006年に東京藝術大学美術学部先端芸術表現科を修了。主な受賞歴に日産アートアワードグランプリ(2015)、神奈川文化賞未来賞(2016)、第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞(2017)など。現在は東京を拠点に活動している。

 今回の展覧会タイトルは「Neue Fruchtige Tanzmusik」は、「新しいフルーティなダンスミュージック」を意味するドイツ語だ。本展では、毛利が近年取り組んでいる、フルーツに電極を挿して内部の水分量などを測り、乾燥や腐敗によって生じる抵抗値の変化を音に変換する作品「Decomposition」シリーズの新作を展示する。

 同シリーズでは初の試みとなる、大規模なオーディオシステムを用いたインスタレーションを中心に、フルーツが腐敗する過程をとらえた写真作品「Neue Fruchtige Tanzmusik(photo)」、また腐敗の過程を「Decomposition」を通じて記録した録音複製作品(LP)《Neue Fruchtige Tanzmusik(vinyl)》を発表する。

 毛利はこれまでも、既製品、ファウンド・オブジェ、自作の装置を組み合わせて、展示環境などの諸条件によって変化していく現象を生成するインスタレーション作品を発表してきた。電子回路によって生み出されるエネルギーが、作品のコンポジションを通じて乱反射することで、日々生起する予測できない諸現象やより大きな世界構造に潜在する複雑性の断片を、視覚や聴覚、また時には触覚や嗅覚を通じて鑑賞者に提示してきた。

 今回展示される「Decomposition」もまた、フルーツの内部で生じている微細な変化を音に変換し、土や幹とのつながりを断った後も生成変化を続けるフルーツの生命の姿を伝えている。