諏訪敦「眼窩裏の火事」

　府中市美術館で、諏訪敦の個展「眼窩裏の火事」が開催される。

　諏訪は1967年北海道生まれ。武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業、同大学大学院修士課程修了。終戦直後の満州で病没した祖母をテーマとした「棄民」シリーズなど、丹念な取材と重層的な思索を経て精緻な描写で描かれる諏訪の作品は、「視ること・描くこと」の意味を問い直す、野心的で今日的な意義をはらんでいる。

　本展は代表的なシリーズから最新作まで、諏訪の制作の深奥に迫るもの。家族の歴史を絵画化した「棄民」、コロナ禍のなかで取り組んだ静物画、そして絵画制作を通した像主との関係の永続性を示す作品群が展示される。

　展覧会タイトル「眼窩裏の火事」について、次のように解説している。

「ときに視野の中心が溶解する現象や、辺縁で脈打つ強烈な光に悩まされることが諏訪にはある。それは閃輝暗点という脳の血流に関係する症状で、一般的には光輪やギザギザした光り輝く歯車のようなものが視野にあらわれるという。したがってここに描かれているガラス器を歪め覆う靄のような光は現実には存在しない。しかしそれは画家が体験したビジョンに他ならない（本展プレスリリースより）」。