EXHIBITIONS

会田誠・曽根裕展「-・-・ ・- -・ ・-・・ ・-- -・・- ・・-- -・・ ・・ --- ・---- ・・--- ----- ---・・〜侵攻の記憶」

メインヴィジュアル

曽根裕 Snowballs 2017 撮影=Jonas Lampens © Tommy Simoens, Antwerp

会田誠 紐育空爆之図(戦争画RETURNS) 1996 零戦CG制作=松橋睦生
高橋龍太郎コレクション 撮影=長塚秀人 © AIDA Makoto Courtesy of Mizuma Art Gallery

 ミヅマアートギャラリーで、会田誠と曽根裕による2人展「-・-・ ・- -・ ・-・・ ・-- -・・- ・・-- -・・ ・・ --- ・---- ・・--- ----- ---・・〜侵攻の記憶」が開催。本展はギャラリーを代表する所属作家の会田誠と、同世代であり個人的に深い交流のある曽根裕との初共演となる。

 曽根は現在ベルギー・アントワープを拠点にしながら、中国、メキシコ、日本にスタジオを構え活動。大理石を使った大型の彫刻作品や、彫刻を用いたパフォーマンス、映像やインスタレーション、ドローイングなど多様な表現を展開してきた。2022年10月より来年3月にかけて曽根は、コロナ禍の移動制限のなか縁あって居を構えた秋田県において、親交のあるアーティストやキュレーターとともに、「SUMMER 2022」というプロジェクトに取り組む。

 プロジェクト名は1967年の夏、アメリカ・サンフランシスコを中心に巻き起こったムーブメント「Summer of Love」からとったもの。「Summer of Love」はベトナム戦争と時を同じくして起こった動向だが、それから55年後の2022年、曽根たちが始動するプロジェクト「SUMMER 2022」も、新型コロナウイルス感染症の世界的流行やロシアによるウクライナ侵攻などにより、社会不安が高まるなかで、直接的、間接的に暴力が氾濫する社会環境に対して、声をあげる必要があると感じたことをきっかけに始まった。

 同プロジェクトは秋田県において、国籍や民族、ジェンダー、世代、文化の相違、様々な信条を越えてつながりを持とうとする表現者同士のゆるやかな、しかし反戦、非暴力において確かな結びつきを、作品の展示だけでなく、文章や写真などの印刷物、また参加型対話の機会をつくることで、広く市民にも広げていくことを目指す。

「SUMMER 2022」に先がけて開催される本展のメインタイトルは、モールス信号の「ニイタカヤマノボレ1208」の表記であり、これは真珠湾への攻撃開始を命じた暗号電文だった。

 本展で曽根は、真珠湾攻撃の暗号電文の、ニイタカヤマにあたる新高山(玉山)から採取した雪玉をセラミックで象った《Snowballs》(2017)と、玉山の情景を描いた新作の絵画を発表。いっぽう会田は、自身の代表作でもある《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》(1996)を展示作品に選んだ。かたちのない記憶を彫刻にすること、現実を超越してしまうような人間の想像力の豊かさ。2人の作品は時代や世相に反応しながら、芸術の根源や義務、その発展の可能性を私たちに提示する。

 会期中には、作家自身だけではなく、様々な人から寄せられたテキストやコメントをもとに、ガリ版印刷で新聞を作成し、今年10月から始まる「SUMMER 2022」プロジェクトへとつなぐ。