EXHIBITIONS

菊谷達史・前田春日美 2人展「影をしたためる notes of shadows」

2022.09.08 - 09.25

展覧会メインビジュアル

菊谷達史 NOCTURNAL ANIMAL 2022

菊谷達史 M市の散策者 2019

前田春日美 遠い体 2019 撮影=comuramai

前田春日美 mark on water 2021 写真=柳場大

松江李穂

 biscuit galleryでは、若手キュレーターの活動支援プロジェクト「biscuit gallery Curator Projects」をスタート。シリーズ第1回は、松江李穂によるキュレーション展「菊谷達史・前田春日美 2人展『影をしたためる notes of shadows』」を開催する。

 biscuit galleryはこれまで、積極的に若手作家を紹介する企画展を行ってきた。新たに始まる「biscuit gallery Curator Projects」は、若手キュレーターたちの自由で実験的な展覧会の実現を、あらゆる面でサポートする取り組みとして、今後も継続していく。

 1回目のキュレーターは、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻修士課程に在籍する松江李穂を起用。出展作家には、菊谷達史と前田春日美の2名を迎える。

 松江は1994年生まれ。2019年に金沢美術工芸大学美術工芸学部美術科芸術学専攻を卒業後、現在に至る。2021年より埼玉県立近代美術館臨時的任用学芸員を務めている。

 展示作家の菊谷は1989年生まれ、2013年金沢美術工芸大学大学院修士課程美術工芸研究科絵画専攻油画コース修了。いっぽう前田は1991年生まれ、2019年に武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻彫刻コースを修了した。

 キュレーターの松江によると、iPhone上に残された身近な記録写真や映像をもとに、ポップ・アートや近代洋画、イラストレーションを混合させたようなシュルレアリスティックな平面作品やアニメーションを制作してきた菊谷は、絵画史の影に自身の制作を位置づけるとともに、記録や実体のないイメージという、現実世界の「影」としての絵画表現を飄然と引き受けている。

 他方、身体に対する不全感や不満を、鏡やプロジェクターを用いてたびたび表現してきた前田の、自身の身体を平面上に投影し、その輪郭や存在の痕跡を再び実体のある立体作品へと変換する制作方法は、身体のギャップを受け入れ、不全感と共存する方法を模索しようとする試みのひとつだという。

「影をしたためる notes of shadows」と題した本展について、「光に対置される暗い影は、心理的にネガティブなものとして捉えられることも多い。しかし本展では、実体を持つ全てのものに寄り添い、異なる次元に姿を現す影の性質を拾い上げ、作家それぞれの制作に対するスタンスや表現方法に重ね合わせてみたい」と、松江は述べている。

 本展では、biscuit galleryの3フロアを使って、2人の作品が展示される。