Vol.76 No.1100
2024年1月号 特集「目[mé]」
「ただの世界」をつくる
今秋、「さいたま国際芸術祭2023」のディレクターを務めた現代アートチーム・目[mé]。アーティストの荒神明香、ディレクターの南川憲二、インストーラーの増井宏文の3人を中心メンバーとするかれらは、2012年に結成、2014年の資生堂ギャラリーをホテルに仕立てたような展示が話題となり、同時に各地の芸術祭での発表が続いた。2019年、千葉市美術館で開催された「非常にはっきりとわからない」では、2つのフロアにまったく同じ光景をつくり、大きな注目を集めることに。コロナ禍の2021年には、東京オリンピック・パラリンピックの開かれる東京で、実在するひとりの顔を空に浮かべる《まさゆめ》を実現。多くの人が目撃し、メディアでも大きく取り上げられた。
結成から10年を超えるいま、プロジェクトの規模を大きくしながら、つねに新たな話題と驚きをもたらしてくれる目[mé]。だが、人が思わず誰かに話したくなるような仕掛けや、そのときその場での作品体験が重要な意味を持つ作風から、話題先行型ととらえられたり、その活動の「実像」が十分に伝わっていない現状もあるのではないか。本特集は、そんな目[mé]がいま何を考えていて、次の10年に向けてどんなステージに向かおうとしているのか、「さいたま国際芸術祭2023」をきっかけにして探っていく。
目[mé]の活動や「さいたま国際芸術祭2023」について、美学者・伊藤亜紗との対談や「SCAPER」の秘密に迫る座談会、論考などで迫っているほか、チームクリエイションを重視する目[mé]の制作面について、これまで機会の少なかった増井へのインタビュー、チームのメンバーへの取材も実施した。目[mé]の掲げる「クリエイティビティの分配」というコンセプトは、多くのクリエイターにとっても参照点となるだろう。また、目[mé]の結成までを描いた「伝記マンガ」も見どころのひとつ。
目[mé]が現在のアートシーンの何を引き受け、アートの何を信じているのか、その真意に迫る様々な声を聞いて、その「実像」を描いてみたい。
