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ジュゼッペ・アルチンボルド

Giuseppe Arcimboldo

 ジュゼッペ・アルチンボルドは1526年イタリア・ミラノ生まれ。マニエリスムの画家。神聖ローマ皇帝フェルディナント1世から宮廷画家の命を受け、マクシミリアン2世、ルドルフ2世の3代に仕えた。野菜や果実、魚、書物などを組み合わせて、全体として顔や人物を表現した寓意的な肖像画で知られる。代表作の「四季」(1563〜1572)は、季節にちなんだモチーフで構成された連作絵画。それぞれ遠くからでは人物の横顔に見えるが、目を凝らすと《春》では80種類の植物、《夏》ではキュウリやブドウ、モモなど夏に収穫される野菜や果物によって描かれている。また《冬》(1563)では、主に木からなる老人が着る外套にマクシミリアン2世の「M」を忍ばせている。《春》と《冬》、《夏》と《秋》は互いが向き合う対画であり、好評だったため何度か複製された。

《秋》のオリジナルは消失したが、残る3組はウィーン美術史美術館に収蔵されている。「四季」と並ぶ代表作「四大元素」(1566)は、大地・大気・水・火が主題。例えば《水》では、タコやカメなどの海産物によって肖像が描かれていることがわかる。一貫として皇帝の権威をたたえながら奇想で驚きをもたらし、いっぽうで当時発展を見せていた自然科学に裏打ちされた作品は、教養ある宮廷人たちに受け入れられた。3代にわたって皇帝に寵愛され、貴族の最高位である宮中伯の称号を与えられている。87年に宮廷を退いて帰郷し、ミラノに戻ってからもルドルフ2世の依頼を受けて肖像画を制作。晩年の傑作《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像》(1591)では、ローマ神話における四季の神・ウェルトゥムヌスに扮する皇帝の正面を描くことで、季節をも支配する権威をたたえている。93年没。20世紀に再発見され、シュルレアリスムの画家たちにも影響を与えている。日本では2017年に国立西洋美術館で日本初回顧展が開催された。