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マックス・クリンガー

Max Klinger

 マックス・クリンガーは、1857年ドイツ・ライプティヒ生まれの画家・版画家・彫刻家。74〜75年までカールスルーエの美術学校、75〜76年までベルリンの美術アカデミーで学んだ後、絵画、版画、彫刻、壁画装飾など幅広い分野で活動する。とりわけ版画においては、生涯で約450点、14もの連作を制作。生や死、愛をテーマに、古今東西の音楽や思想、文学などを織り込んだ象徴主義的でありながら、優れたデッサン力と版画技法によって写実的でもある版画作品を手がけた。代表的な版画作品に、自身の若き日の恋を題材とした「手袋」(1881)、19世紀後半のベルリンを舞台に、都市の表裏を照らし出した「ドラマ」(1883)、人々に訪れる死をあらゆる道筋で描いた「死について」(1898〜1910)。とくに手袋や女性を好んでモチーフに用いた。91年には著作『絵画と線描』において、幻想世界を表現するうえで版画・素描は作用しやすいと述べ、これらを「尖筆芸術」と称する独自の理論をまとめた。ウィーン分離派、ベルリン分離派に参加し、1902年の第14回ウィーン分離派展では、ベートーベンをたたえる彫刻作品《ベートーベン像》がメインで展示された。絵画・彫刻・建築や音楽などの諸芸術を融合すべきという、音楽家リヒャルト・ワーグナーの「総合芸術」の思想に影響を受けている。日本では『白樺』などを通して紹介された。20年没。国立西洋美術館に主要な版画作品が多数収蔵されている。