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國府理

Osamu Kokufu

 國府理は1970年京都府生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。大学院在籍中に美術家・野村仁が主宰するソーラーカーによるアートプロジェクト「Solar Power Lab」に参加し、94年にアートスペース虹(京都)で初個展「KOKUFUMOBIL」を開催。自動車や工業製品を用いた、実際に機能する立体作品を手がける。99年にはソーラーカーによるアメリカ大陸横断旅行「HAAS project」に協力。2000年代に入ると初期の立体作品に加え、自動車に植物を生育させる作品や、植生を人工的に制御する温室など、人間、機械、自然を対比させ、それぞれの関係性を見つめ直す作品を制作する。12年、東日本大震災の福島第一原子力発電所事故をきっかけに制作した《水中エンジン》をアートスペース虹で初展示。愛用の軽トラックのエンジンを水中に沈めて稼働させる同作品は、原子力発電所と同じ構造を持ち、システムを維持することの難しさや脆さの可視化を試みた。14年、国際芸術センター青森での個展「國府理展 相対温室」の作品点検中の事故により逝去。享年44歳。

 作家の没後、インディペンデント・キュレーターの遠藤水城の呼びかけで「《水中エンジン》再制作プロジェクト実行委員会」が組織され、17年の「裏声で歌へ」展(小山市立車屋美術館)および、國府によるオリジナルの作品が展示されたアートスペース虹での同年の「國府理 水中エンジン redux」展にて、白石晃一、高嶋慈、はがみちことともに再制作した作品が発表された。21年には、美術評論家・椹木野衣の企画・監修による展覧会「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)1989–2019」(京都市京セラ美術館)において、「《水中エンジン》再制作プロジェクト」が取り上げられた。本プロジェクトは改変された作品の正当性、作品の保存・修復や再制作に伴う記録・アーカイヴなどについて考えると同時に、作品の忠実な再現としての「再制作」とはまた異なり、《水中エンジン》の持つ「脆い」状態を再現する試みである。