インタビュー:TikTokはなぜいま「アート」に力を入れるのか?

サービス開始からわずか3年半にもかかわらず、全世界で幅広い世代で圧倒的な人気となっているショートムービープラットフォーム「TikTok(ティックトック)」。現在、アートコンテンツの充実を積極的に図っている。TikTokはなぜアートに力を入れているのか? TikTok Japan マーケティングチームの白地祐輝に詳細を聞いた(PR)。

文=浦島茂世

TikTok JAPAN マーケティングチームの白地祐輝
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TikToKがアートに力を入れる理由

──ユーザーによるダンス動画などのイメージの強いTikTokですが、現在は様々なジャンルの動画がアップロードされているようです。

 TikTokがサービスを開始して約3年半が経過しました。当初は若年層ユーザーを中心に、ダンスなどを使った自己表現の投稿が盛り上がっていましたが、ユーザー数が増加し、年齢層が広がるにつれて、コンテンツの幅も広がっています。英会話のワンポイントレッスンやグルメ情報、生活に役立つ情報など多様なコンテンツが展開されるようになっています。そのなかでも、アートを扱う投稿も日を追うごとに増えています。

──それは世界的な兆候なのでしょうか?

 投稿の再生数で見てみると、 #アート というハッシュタグをつけた投稿はサービス開始から現在まで約2億回以上、#art というハッシュタグに至っては約1500億回以上再生されています。この他にも多くの芸術、アート関連のハッシュタグが数多くあり、いずれも投稿数・再生数は活発です。自分の作品をTikTokで披露しているユーザーもいらっしゃいます。

──全世界的にアートに関心を寄せているユーザーが多いのですね。

 現在、TikTokが行っているプロジェクト「GoToアート」も、多くのユーザーがアートに興味・関心を持っていることがスタートしたきっかけのひとつです。

 昨年より新型コロナウイルスの流行があり、気軽に旅行や外出ができない状況が全世界で発生していました。この状況のなか、私達ができることはなんだろう?と考え、2020年10月より「GoToアート」というプロジェクトの形でスタートしました。現在まで世界各国の美術館との提携を呼びかけたり、公式アカウントを立ち上げたり、美術館を舞台にLIVE配信を行っています。

──TwitterやInstagramなど、海外の美術館はSNSを積極的に活用していますが、TikTokも非常に多くの美術館が活用していることに驚きました。

 イタリアのウフィツィ美術館や、オランダのアムステルダム国立美術館、スペインのプラド美術館など日本でも有名な美術館が続々と公式アカウントを立ち上げています。どの美術館のアカウントも、TikTokの文化をよく理解してくれて、ユーザーの興味を掻き立てる投稿になっています。

──アムステルダム国立美術館のように作品の解説を行ったりするアカウントもあれば、ウフィツィ美術館のように収蔵作品に吹き出しを加えたり、装飾をしたりするなど日本の感覚だと驚くような投稿を行っている美術館も多いです。

 海外の美術館は非常に個性が際立っていますよね。日本の美術館と同じく、世界各国の美術館は若年層に興味・関心を持ってもらうことを大きな課題としています。TikTokはこれまで美術館がアプローチできていなかった層に働きかけることが可能です。そして、TikTokにはユーザーが興味を持ちそうな動画を自動的におすすめする機能「レコメンドシステム」があります。これは、ユーザーの視聴する動画内容や視聴時間、「いいね」やコメントなどから、「この投稿はこのユーザーにおすすめだ」というコンテンツを、自動的に「おすすめフィード」に表示するというもの。ユーザーが美術館のアカウントをフォローしていなくても、レコメンド機能によって美術館の投稿を目にし、そこからより深く美術館やアートに興味を持てる仕組みを用意しているのです。

アムステルダム国立美術館のLIVE配信より
アムステルダム国立美術館のLIVE配信より

美術館から送るLIVE配信

──「GoToアート」の試みのひとつとして、美術館からTikTok LIVEの配信も行っています。

 「TikTok LIVE」というLIVE配信機能を使って、世界各国の美術館からLIVE配信を行っています。2020年6月に全世界ユーザーに向けて美術館からLIVE配信を行ったところ非常に好評でした。そこで、2020年10月に日本語を使用するユーザー向けにTikTok「GoToアート〜TikTok LIVEで巡る5日間欧州アートの旅〜」を開催しました。スペインのプラド美術館、イタリアのウフィツィ美術館、オランダのアムステルダム国立美術館、フランスのピカソ美術館、そしてイスラエルのテルアビブ美術館から現地の専門家の解説を交えて中継をしたのですが、こちらも非常に好評で、のべ約13万人のユーザーに視聴していただきました。コメントも1万4000件以上いただいています。

──自由に海外へ出かけるのがままならない現在、手元のスマートフォンから海外の美術館の作品を観ることができる機会は非常に貴重な機会です。日本の美術館の状況はいかがでしょうか?

 これまでに4つの美術館でLIVE配信を行っています。日本の場合は現在のところ、開催中の展覧会を紹介することが多いですね。三菱一号館美術館では「開館10周年記念 1894 Visions ルドン、ロートレック展」、アーティゾン美術館では「琳派と印象派 東西都市文化が生んだ美術」展、広島県立美術館では「北斎漫画」展、そして宮城県美術館では、「東日本大震災復興祈念 奈良・中宮寺の国宝展」を紹介しました。

三菱一号館美術館のLIVE配信より
三菱一号館美術館のLIVE配信より
アーティゾン美術館のLIVE配信より
アーティゾン美術館のLIVE配信より

 また、先月開催されたアートフェア東京2021の模様を2日間にわたってLIVE配信しました。これまでのアートファンに加え、ナビゲーターの和田彩花さん、岡部麟さんのファン、そしてレコメンド経由でやってきたユーザーの方など様々な方に視聴していただいています。

──日本のみならず世界中から話題の展覧会を鑑賞できるのはうれしいですね。また、自由なスタイルで配信ができるのも魅力のひとつです。

 宮城県美術館の国宝展のLIVE配信では、国宝・菩薩半跏思惟像を紹介することに一点集中。半跏思惟像を360度あらゆる角度から時間をかけて配信・解説しました。テレビ番組など時間制限のある番組だと困難な試みであっても、TikTok LIVEなら可能です。「このアングルで観られるのは貴重!」「まさか国宝をTikTokで見ることができるとは」「知らない話がたくさん聞けました!仏像の見方が変わります」「若い世代にも伝わる素晴らしい取り組みですねコメントも非常に好評でした。」など、コメントも非常に好評でした。

──現在、美術館からのLIVE配信はTikTokを含め様々なプラットフォームが注目しています。TikTokならではの強みはどのような点でしょうか?

 やはりレコメンドです。リアルタイムでTikTokを利用しているユーザー、そのなかでもアートに親和性を持つユーザーにリーチできるのはTikTokならではの機能です。LIVE配信前の事前の告知ももちろん大切ですが、TikTokの場合はLIVE配信が行われていることを知らないユーザーでも、レコメンドをきっかけに視聴に至ることが多いです。TikTokで起きた偶然の出会いをきっかけに、美術館へ通うユーザーが増えてくれたら非常に嬉しいです。もちろん無料ですから、気軽に利用できますね。

──今後、GoToアートはどのように展開していくのでしょうか?

 アートに関心のある人はもちろん、普段アートに馴染みのない人もよりいっそう盛り上がるアートコンテンツを提供していきたいと考えています。国内外の美術館とよりいっそう連携を深め、LIVE配信を含めて様々なコンテンツを提供していきたいですね。そして、ユーザーの皆さんにもアートを発信する拠点としてTikTokを活用していただければと考えています。