TikTokで広がるアートの世界:アートフェア東京2021を和田彩花と岡部麟がレポート

全世界で幅広い世代に親しまれているショートムービープラットフォーム「TikTok(ティックトック)」は、独自の取り組みとして、2020年秋よりプロジェクト「TikTok GoToアート」をスタート。国内外の美術館の展示作品を楽しめるコンテンツやライブ配信を用意し、ユーザーに好評を博している。TikTokはアートに対してどのように取り組んでいるのか? 美術手帖では、シリーズでその取り組みを紹介していく。今回は、去る3月19日・20日に行ったアートフェア東京2021のライブ配信の模様をレポートする(PR)。

文=浦島茂世

前へ
次へ

 長く続くコロナ禍により、海外への渡航はもちろんのこと、日常の外出もままならない状況が続いている。「TikTok GoToアート」のプロジェクトは、国内外の様々な美術館やアートイベントを日本語解説付きでライブ鑑賞することができ、また誰でも無料で楽しむことができるものだ。

 この「TikTok GoToアート」の一環として行われたのが、3月19日、20日に開催したアートフェア東京2021のTikTok独占ライブ配信だ。タレントの和田彩花や岡部麟(AKB48)をナビゲーターとして迎え、会場の様子やアーティストの生の声を約90分にわたり配信。ライブ配信を視聴したユーザーが実際に会場へ足を運ぶなど、様々な効果が現れた。この2日間のライブ配信の模様をダイジェストでリポートする。

 アートフェア東京は、2005年から続く日本最大級のアートフェア。古美術から現代アートまで幅広い作品が展示され、今年の参加団体は140、入場者数は有料エリアだけで約4万人にも及んだ。入場人数を抑制しての開催となった今回は、TikTokは2日間にわたり現地からライブ配信を行い、世界各国からアートフェア東京を体感してもらえるように取り組みを行った。この2日間のライブ配信の視聴者数は延べ約5万人、約2,500件ものユーザーコメントがあり、「TikTokでこのような展示が見れるのは嬉しい」「実際に行って観たい!」「(実際に行くと)有料なのに(無料で)本当に見ちゃっていいの?」などのポジティブなコメントが多数見られた。

和田彩花がレポートするアートフェア東京2021

 1日目のナビゲーターは、芸術に造詣の深いアイドルとして知られる和田彩花。アイドルグループ・アンジュルムの元リーダーの和田は、高校時代に美術に興味・関心を持ち、芸能活動の傍ら、大学・大学院で美術史を専攻。専門は19世紀後半の近代美術だ。ソロで活動することとなった現在も、アートに関わるエッセイを執筆し、アートイベントにも積極的に参加している。

和田彩花

 和田がアートフェア東京を訪れるのは今回が初めて。「美術が大好きで、作品の良さは値段だけでは語れないと思っていました。そのため当初、芸術作品の売買の場になっているアートフェア東京は少し近寄りがたい印象を持っていたのです」と、配信の冒頭で告白していた和田だが、訪れた各ギャラリーのブースで、ギャラリースタッフやアーティスト本人と言葉を交わし、作品をより深く理解できることを体感。会場の雰囲気を楽しみながらのレポートとなった。

 最初に訪れた夢工房のブースでは、四代 田辺竹雲斎の作品と対峙。スケールの大きな作品に感銘を受けただけでなく、竹雲斎本人から、作品を構成する竹はほどいて再利用が可能であることや、四代 続く名前を受け継ぐ重さなどを聞き出し、「作品を観るとき、これまで作家さんの姿しか思い浮かべていませんでしたが、初代竹雲斎さんから受け継いだ歴史や文化も考えるようになりました。竹を再利用できるというのも素晴らしいですね。アートでサスティナブルを感じられるのがすばらしいです」と、これまでにない作品の見方を知ったようだ。

 続いて訪れたみぞえ画廊は、クロード・モネの《牧草地、曇り空》を鑑賞。14億円という値段ながら、すでに引き合いがあることを聞いた和田は「美術館で作品を観るのとは違う感覚。作品が動いている瞬間と感じる、初めての感覚です」とコメント。油彩画が好きな和田は、モネの筆致を間近で見られる鑑賞体験に驚きを隠せず、言葉があふれでてくる。

 この後、gallery UGではポップなスタイルの木彫で知られる野原邦彦を、KOSAKU KANECHIKAでは、レディ・ガガも購入したヒールレスシューズをデザインした舘鼻則孝にインタビュー。それぞれのスタイルで、日本文化を解釈し、独自の作品としてアウトプットする姿に和田は、アーティストの心境に深く迫る質問を矢継ぎ早に問いかけ、ユーザーもコメントで大いに盛り上がっていた。

 「参加するギャラリーによって、方針が大きく異なり、雰囲気も全然違う。また、作家さんとの関係の築き方なども異なることがわかり、非常に勉強になりました」と、楽しそうに締めくくっていた。

岡部麟(AKB48)がレポートするアートフェア東京2021

 二日目のナビゲーターは岡部麟。AKB48チーム8茨城県代表 およびチームAのキャプテンとして活動する岡部は、幼い頃から絵を描くことが得意で、現在はチーム8の公式キャラクターを手掛けるほどの腕前だ。アート鑑賞を趣味とする岡部のレポートはアートフェア東京2021のエグゼクティブ・プロデューサー、來住尚彦のインタビューからスタート。來住は「高さ5メートルくらいからの作品から小さな作品までバラエティ豊かにそろえている。様々な感情や意識が凝縮された」と語る。

 岡部がまず訪れたのはチケットを持たない人も鑑賞できる無料エリア。Shun Sudo、トリスタン・イートン、山口歴ら、現在注目されているストリート系アーティストを取り上げるSEIBU-SOGOや、京都とパリの職人やアーティストによる協働プロジェクト、サヴォアフェール デ タクミのブースを訪問。「数多くのアーティストの作品を鑑賞できる」と、岡部はさっそくアートフェアの魅力に夢中なよう。

岡部麟

 有料エリアでは、大滝詠一やサザンオールスターズのジャケットイラストで知られる永井博の作品をALLERY TARGETや、家族写真などをモチーフに絵を描く マリウス・ブルチーアを展示するMAKI Galleryに展示された作品を鑑賞。自ら絵を描く岡部は、アーティストの描画方法に強い関心を寄せ、ギャラリー担当者への質問も、画材や制作手法にまつわるものが多くみられた。また、ときにはカメラマンを自ら呼び寄せ、作品の凹凸のアップを撮影させることも。LIVEを見ていたユーザーも、岡部の心配りに感謝のコメントが多く寄せられていた。

 古美術から現代まで幅広く取り扱う瀧屋美術のブースでは、初代 田辺竹雲斎の竹細工を紹介。異なるギャラリーブースで同じ作家や、つながりのある作家の作品を見比べられるのも、アートフェアならではの醍醐味だ。両日にわたり視聴しているユーザーもまた、1日目に紹介された四代 田辺竹雲斎作品との作風の違いを感じられたはずだ。

 そのほか、サテライツ・アート・ラボでは、絵の具のチューブを細かく絞り出して点描を描く、森勉のペインティングを、FUTURE ARTISTS TOKYOでは、キュレーターの一ノ瀬健太がピックアップした注目の若手アーティスト、たんぽぽの綿毛を選別し、高さを揃えた青沼祐介による作品なども紹介。緻密な作品を妥協せずに制作するアーティストの熱意は岡部だけでなく、鑑賞するユーザーにも感動を与えていた。

 レポートを終えた岡部は「TikTokは流行に敏感な人たちが活用する楽しいアプリ。ライブ配信を通して、アートにふれる機会をたくさんの人に持ってほしいと感じました。TikTok LIVEを見てくれたAKB48のファンの皆さんもアートの楽しさに気付いてもらえたと思います。自分も創作意欲が止まりません、また芸術に触れ合える時間が訪れるといいなと感じています!」と、今回のレポートが自分を含め様々な人々のアートの入り口になった意義を感じていた。

 今回、アートフェア東京の担当者は「生配信でアートを見ていただくことで、今までとは異なるシーンを作れたように思います。ユーザーの反応がコメントで即座にわかるので、非常におもしろい経験でした。TikTokのGoToアートの試みは、いろいろな人にアートに興味を持ってもらえる非常にありがたい試みですね」と、TikTok LIVEを終えて感想を述べた。 

 TikTokは、今後も美術館からのライブ配信や、世界中の有名美術館が参加するMuseum Weekのイベントなど、国境の枠を超えた企画を検討中とのこと。アートに関心のある人はもちろん、普段アートに馴染みのない人もアートに惹きつけるTikTokのアートコンテンツは、目が離せない存在だ。