現代美術コレクターへの道:コレクターのコミュニティとどう付き合うか

アートコレクターとして、現代美術のコレクションを行ううえでの基礎的な知識やルール、知っておいた方が良い豆知識などをお届けするシリーズ企画。アートコレクター・コバヤシマヒロが案内する。

文=コバヤシマヒロ

「Collectors' Collective Vol.5」展示風景より
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 身震いするほどの作品に出合えたときの気持ち、心待ちにしていた目当ての作品を購入できた喜び──これをほかの人となかなか共有できないのが、初心者の市民アートコレクターの本音かもしれません。私自身も、作品を十数点購入するようになっても、しばらくは1人で黙々とギャラリーめぐりと購入を重ねていました。

 そんな気持ちを共有できるうえ、コレクションにも幅が出てくるのが、アートコレクターのコミュニティへの参加です。私自身は、コミュニティに加わったことで、その仲間たちとコレクション展覧会を2回開催するまでに至りました。今回は、複数のコレクターから募集した意見をもとに、アートコレクターのコミュニティに入るメリットやデメリットについてまとめたいと思います。

「Collectors' Collective Vol.5」展示風景より

きっかけは、SNSがダントツ

 アートコレクター同士がつながるきっかけには、リアルとオンラインのふたつがあります。リアルでは、知人がたまたまコレクターだったり、ギャラリー内でギャラリストを通じて紹介してもらったりすることが多いようです。

 その場合のメリットとしては、「つながる場所が好きなギャラリーや作家なので、好みに共通点があり、わかりあえる」「アート以外の話に広がらないため会話していてもストレスがない」などといったことが挙げられます。

 私自身もギャラリーを運営しているので、コレクターさん同士をつなげることもありますが、すぐに盛り上がり、熱を帯びた会話をしている場面をよく目にします。

 そのいっぽうで、最近増えているきっかけがSNS。お気に入りの作家や好みの作品を購入しているコレクターをフォローしているうちに、やりとりが始まり、実際にリアルで会うことも多いようです。とくに、地方在住のコレクターにとっては東京の展覧会情報が次々にアップされるSNSは貴重な情報源。福岡在住のコレクターは「福岡はギャラリーがないので、リアルの場所でつながることができません」と話すほどです。

 では、どんな投稿をしている方同士がつながるのでしょうか。なにより「写真や文章がうまく、自分自身の言葉で感想を語っていること」という意見が多かったのですが、作品を購入している者同士、たしかにそこは重要な点です。「自分がその作品が好きだから買う」コレクターにとって、その「好き」の度合いが手に取るようにわかる投稿は、共感を得やすく、好感が持てるのは当然でしょう。そのほか、「自らのコレクションを紹介」したり「会期を明記」している投稿は、印象が良いようです。

 やはり、同じ趣味の人が近くにいないコレクターが大多数なので、SNSでつながれることはありがたいそうです。

「Collectors' Collective Vol.5」展示風景より