たばこと塩の博物館の「隅田川に育まれた文化 浮世絵に見る名所と美人」は、隅田川とその流域が描かれた作品や美人画揃物など約200点を、前後期で紹介する展覧会だ。
同展は、名所と美人が描かれた浮世絵に焦点を当てた3部構成。第1部は「描かれた江戸の水辺 隅田川を中心に」、第2部は「弘化・嘉永期の美人画 国芳・三代豊国の揃物を中心に」、第3部は「江戸の後」となっている。
第1部のテーマとなっている隅田川は、江戸時代の物流や交通の要所。その周辺には、花の名所や役者の別荘、料亭などがあり、芸者の姿も多く見られた。こうした隅田川沿いの風景は、19世紀前半の浮世絵に多く描かれ、美人画や役者絵の背景やコマ絵としても好まれた。また、歌川国貞(三代歌川豊国)や歌川国芳といった浮世絵師も、隅田川の近くに居住していた。
第2部で中心となるのは、奢侈禁令が掲げられた天保改革直後の作品。衣類や装飾品、料亭、別荘といった題材、そして浮世絵そのものが取り締りの対象となり、遊女や役者の似顔絵は禁じられた。しかしながら制作が難しい時代においても、三代豊国や国芳をはじめとする絵師たちは、禁令に触れないような工夫を凝らした作品を生み出していた。
第3部は明治の浮世絵を紹介。明治維新後、時代の変化とともに不遇な扱いを受け、需要が少なくなっていった浮世絵。しかし、こうした状況にあっても、楊州周延や小林清親の作品は隅田川を中心とする名所と美人の組み合せを展開していった。
浮世絵の時代を3部にわたり紹介することで、その表現やモチーフの変遷を追うことができる展覧会となっている。