2017.8.3

Chim↑Pomはなぜ「道」をつくったのか? スクラップ&ビルドで可視化する東京の現在

2016年、歌舞伎町でビル一棟を丸ごと使った展覧会「『また明日も観てくれるかな?』〜So see you again tomorrow, too?〜」で大きな話題を呼んだChim↑Pomが、同展の続編となる個展「道が拓ける」をスタートさせた。本展で会場に「道」をつくった彼らの狙いとは?

Chim↑Pom The pussy of Tokyo 2017
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 Chim↑Pomは、2016年から「Sukurappu ando Birudo プロジェクト」と題したプロジェクトをスタートさせている。これは、2020年の東京オリンピックに向けて急速に再開発が進む現在の東京の都市の姿を、「スクラップ&ビルド」をテーマに描くものだ。

 この一環として、16年10月には、解体が決まっていた新宿の歌舞伎町商店街振興組合ビルを舞台に、「全壊する展覧会」 として「また明日も観てくれるかな?」展を開催。会期中は入場待ちの行列ができるなど、大きな話題を呼ぶとともに、新宿のど真ん中というアクチュアルな舞台で、実社会と対峙する姿勢が注目を集めた。

「また明日も観てくれるかな?」展で展示された《ビルバーガー》(2016) 撮影=KENJI MORITA
「また明日も観てくれるかな?」展最終日の様子 撮影=YUKI MAEDA

 7月29日から高円寺のキタコレビルで始まった「Sukurappu ando Birudoプロジェクト 道が拓ける」は、その続編にあたるもの。

 

 本展では、歌舞伎町商店街振興組合ビルの解体に伴って破壊されたジオラマの再構成し、実際のネズミを住まわせる《SUPER RAT -SCRAP & BUILD-》(2017)や、性産業に携わる女性のシルエットを描いた《みらいを描く》(2016)を埋葬して定礎石を埋め込んだ《みらいの埋立地》(2017)など、一度は破壊(スクラップ)されたものを、ふたたび作品化(ビルド)したものが、キタコレビルのそこかしこに展示されている。

Chim↑Pom《SUPER RAT -SCRAP & BUILD-》(2017)の一部。ビル解体とともに破壊されたジオラマがそのまま使用されている
パルコから一時借用している「P」のネオンサインを使った《PAVILLION》(2012 / 2017)の一部。「C」は「Common」「City」などの頭文字でもある
パルコから一時借用している「P」のネオンサインを使った《PAVILLION》(2012 / 2017)の一部。「P」は「Private」「Public」など頭文字でもある

 本展でもっとも注目すべき点は、キタコレビル内に開通した「道」だ。今年の初頭から、キタコレビル内で、建築家・周防貴之と協働して「道」の設計・施工を進めていたというChim↑Pom。「Chim↑Pom通り」と命名されたこの「道」は展覧会にあわせて竣工し、24時間の無料一般開放がスタートした。

 もともとは2棟の家が増改築され続けてきたと考えられているキタコレビル。ここを拠点にしてきたChim↑Pomは、なぜ敷地の中に道をつくろうと思ったのか? Chim↑Pomリーダーの卯城竜太はこう語る。「結成当時から僕たちは道で作品をつくってきた。キタコレビルはウチらの制作場所でもあるから、路上を出現させるのは筋が通ってるかなと。ていうか、スクラップ&ビルドといっても、そもそも何を新しくビルドするか、何が建築的に皆に必要とされているかも、今はわかりづらい。それだったら、スクラップされたものによる埋め立て地として、また実験的な公共空間として、『道』をつくることはどうだろうと。これまでChim↑Pomは公共空間にアタックしてきた側だったけど、逆にChim↑Pomが受け入れ側として、そのアタックをどれだけ許容できるかの実験にもなる」。

 舗装された「Chim↑Pom通り」の地面の下には歌舞伎町商店街振興組合ビルやキタコレビル、そして旧国立競技場などから出た廃材が積み重なっており、その様子は地下空間から見ることができる。2020年に向けて加速していく東京のスクラップ&ビルドを可視化させ、プライベートな空間に公共性を取り込んだChim↑Pom。この新たな試みが今後どのような展開を見せていくのか注目したい。

都内各地から集められた廃材が積み重なった《The Road Show》(2017)
「Sukurappu ando Birudo プロジェクト 道が拓ける」展 メインビジュアル