今年2月から京都市京セラ美術館で開催中の「村上隆 もののけ 京都」。昨年12月から今年6月にかけて、2回にわたるふるさと納税を実施し、合計5億円以上の寄付を集めた。
今回のふるさと納税を利用した資金調達をめぐり、その背景や手法、成果などについて関係者が語るトークイベントが、7月19日に京都市京セラ美術館で行われた。登壇者は、山﨑裕介(京都市京セラ美術館事業企画推進室ディベロップメント・マネージャー)、佐々木翔平(有限会社カイカイキキCOO)、伊藤圭之(京都市行財政局総務部総務課ふるさと納税担当係長)の3名。モデレーターを務めたのは、深柄謙一郎(株式会社トラストバンクふるさとチョイス事業部マーケティング統括部MD戦略部 部長)だ。
ふるさと納税×アートの効果
イベントが始まって間もなく、山﨑は同館の昨年の収支について語った。昨年、同館の歳入は約6億9000万円で、そのうち展覧会配当収入が2億7000万、美術館使用料が3億4000万だった。いっぽうの歳出は約10億3000万円で、赤字の約3億4000万は税金によって補填されたという。
同館は通常、展覧会の入場料などによる事業収入と、美術館のスペースを外部に貸し出すことで得られる場所代やイベント収入という資産収入で資金を調達している。しかし、今回の展覧会は「リニューアル後最大規模の展覧会であり、世界トップクラスのアーティストを招聘し、国際的な水準の展示を実現するためには、予算が大幅に不足していた」という。そんななかで、新たにふるさと納税、個人や法人の寄付などにチャレンジすることになった。
資金不足の金額は約1億2000万円だった。カイカイキキの佐々木は、「急ピッチで計画を進め、1万円から10億円までのプランを用意した」と話す。レアリティ付きの限定トレーディングカードを提供することで、肉や魚以外のふるさと納税の選択肢を増やすいっぽうで、コレクター層へのリーチもできた。また、前代未聞のプランを提供することで、話題性がつくられてメディアの露出も高まったという。
昨年12月7日から今年2月2日まで実施された第1弾では、1月末からふるさと納税でしか入手できないトレーディングカードへの注目が一気に高まり、最後の3日間で1億円以上の金額が集まった。最終的には3億円を超える寄付が集まり、1億2000万円の資金不足をほぼカバーすることができた。
続いて3月2日から始まった第2弾も非常に注目を集め、最初の3日で1億円を突破し、最終的には累計5億円以上の寄付を集めることができた。5億円の寄付のうち、手数料を除いて5割は京都市に税金として納められ、3割はチケット代やカード代金、作品の代金などの返礼品として美術館や関連業者に還元された。今回のふるさと納税を通じ、約4万枚の展覧会チケットが販売され、美術館には約1億円弱の金額を集めることができたという。