大阪・長居の大阪市立自然史博物館で、特別展「『ネコ』〜にゃんと!クールなハンターたち〜」が開幕した。会期は9月23日まで。昨年、名古屋市科学館で開催された展覧会の巡回となっている。
人類の歴史のなかで、長く愛玩されてきたネコ。親しみやすく、繰り返し美術のモチーフにもされてきたネコだが、いっぽうでトラやライオンといった大型種からヤマネコのような小型種まで、ネコ科は肉食動物のなかでもとくに肉食傾向が強い種であり、その性質はイエネコにも受け継がれている。本展はこうしたネコ科の多面的な魅力に、科学的知見から迫るものだ。
現在、地球上には41種類のネコ科の動物が存在するが、その起源とはどのようなものだったのか。展覧会冒頭では、ネコ科の来歴を知ることができる。恐竜が絶滅したのちに現れた大型の肉食哺乳類が、ネコ科のルーツとなっっていった。なかにはサーベルタイガーのような有名な絶滅種もいるが、その長いキバがどのように使われていたのか、といった最新の研究成果も紹介されている。
また、ネコと対置されることが多いイヌ科がどのように地球上に現れてきたのかもここでは紹介される。ネコ科よりも雑食に寄っているイヌ科であるが、どのように進化したのか、そしてネコ科との違いはどこにあるかを骨格標本や系統樹から知ることができる。
本展ではイエネコについて科学的な知見も多く、最新の研究結果も紹介されている。イエネコが獲物に飛びかかろうとする姿を再現した大型の人形は、爪を出し入れしたり、明暗で瞳孔の大きさを変えたりといったネコの特徴が、ボタンを押すことで再現できる。
そして、本展最大の見どころは世界の41種のネコ科すべての標本が一堂に紹介されているところだろう。地球を3つのエリアに分け、それぞれの地域に生息するネコを剥製や骨格といった標本で展示している。ネコ科の多様性を知ることができるとともに、例えば生息域も身体の大きさも異なる種が、遺伝的には近似であることなども紹介されている。
希少種を含めた41種の標本のほとんどが国内の館の収蔵品であることから、日本の博物館が蓄積してきた標本資料の潤沢さも感じられるだろう。博物館の収蔵資料が希少種まで含めてる。また、チーターの走り方の特徴。研究者にとっても骨格から剥製まで、様々な標本を見比べられる貴重な機会になった。
また、日本にいる2種のヤマネコ、イリオモテヤマネコとツシマヤマネコの生態と調査研究のやり方などについても、豊富な資料とともに展示。どのように生きているのかについて理解を深めることで、保護への意識も高まる。
最後に、世界におけるネコ科の保全活動について紹介されている。野生のネコ科の多くは絶滅の危機に瀕しているため、保護活動も活発に行われている。その内実はたんなる調査や自然保護だけでなく、家畜を守ったり毛皮を売ったりするために捕獲・殺害をする地域住民に対する経済活性化策など、根本原因の解決のために活動する人々がいることは、もっと知られてもいいだろう。
ネコという身近な存在を通して、ひとつの生物のあり方、そして人間との関わり方までもを考えることができる展覧会となっている。