ロンドンの医療研究財団ウェルカム・トラストが、ベルリン、ニューヨーク、ベンガルール、東京の4都市を中心に行っているプロジェクト「マインドスケープス」。その東京プロジェクトの成果発表会とも言える「MINDSCAPES TOKYO WEEK」が、2月28日まで東京・有楽町にあるYAU STUDIOで開催されている。
「マインドスケープス」は、ウェルカム・トラストが展開している、アートや文化的なアプローチから「メンタルヘルス」を問い直す国際的なアートプロジェクト。今回の「MINDSCAPES TOKYO WEEK」は、「UI都市調査プロジェクト」「コンビーニング」の活動報告、「雑感/ZATTKAN」「サロンZ」などの交流イベントによって構成されている。
例えば、「UI都市調査プロジェクト」プロジェクトは、都市におけるメンタルヘルスの在り方について、アーティストと若者の視点や発想、アプローチから実験的な共同調査に挑むもの。上野千蔵(映像作家)、林敬庸(大工)、yoyo.(料理人)がそれぞれリード調査員を務め、「都市とこころ/精神の健康」から発想した3つの調査テーマに10代〜20代のユース調査員とともに取り組んだ。今回のイベントでは、3組の調査チームによる結果をオープンスタジオ形式で紹介している。
「映像×メンタルヘルス:フツウってなに?」と題された上野チームの調査では、この問いから出発し、様々な対話と実験を重ねた調査の過程を映像作品として発表。林がリード調査員となった「日本建築×メンタルヘルス:究極の『寝床』をつくる」では、調査を踏まえ、各自のアイディアから寝床の模型や、VR空間での究極の寝床、 小冊子『究極の寝床論』を制作した。「食×メンタルヘルス」をテーマに、yoyo.のチームは調査を通じて「みそしる点前(てまえ)」をつくりあげた。茶道で抹茶をたてる作法に模し、自分の心を整えるための作法だという。
また会場には、アート/文化の視点からメンタルヘルスについて対話を重ね、学び合うことを目的とした交流スペースも設置。マインドスケープス東京の写真・映像記録を担当した西野正将(美術家・映像ディレクター)による活動のアーカイヴスペースや、マインドスケープス東京の関連団体の資料が並ぶコミュニティ・テーブルなどで、様々な参加メンバーや団体の活動を通してメンタルヘルスに対する理解を深めることができる。
なお、会期中には上記のユース調査員たちが毎日10人程度会場で運営に携わっており、調査プロジェクトについて話し合うこともできる。マインドスケープス東京の統括アーティストである菊池宏子は、「今回のイベントは展示会より、コミュニケーションをする場だ」と強調しつつ、次のように話している。
「キーワードにあるのは『生きた経験』。優越をつけず、それぞれが生きてきた価値や経験をちゃんと話していくことが非常に重要だと思う。様々な情報社会のなかで生きているユース調査員たちと話すことにより、これからのメンタルヘルスや、自分のなかで新たなことを考えるきっかけにもなるだろう」。
コロナ禍においてますます重要視されてきたメンタルヘルス。今回のプロジェクト、そしてユース調査員との対話と通じて、メンタルヘルスとその今後について考えてみてはいかがだろうか。