銀座メゾンエルメス フォーラムで、ジュリオ・ル・パルクの日本での初個展となる「Les Couleurs en Jeu ル・パルクの色 遊びと企て」が開幕した。 会期は11月30日まで。
ジュリオ・ル・パルクは1928年アルゼンチン生まれ。58年にフランスに移住して以降、92歳となる現在も同地を拠点に精力的に制作を続けている。ル・パルクはピート・モンドリアンやロシア構成主義に大きな影響を受け、幾何学的な抽象画の制作をスタート。60年代には、ヴィクトル・ヴァザルリの作品に共鳴するとともに、視覚芸術探究グループ(GRAV)をオラシオ・ガルシア = ロッシ、フランソワ・モルレ、フランシスコ・ソブリ ノ、ジョエル・スタイン、イヴァラルとともに結成するなど、アーティスト同士の協働による活動も並行して推進してきた。
GRAVは、視覚的錯覚あるいは動力を用いたキネティック・アートや公共の場における観客参加を促す作品を通じて、従来の美術作品の枠組みや鑑賞方法を覆すような体験を社会に提案。当時の革命的な時代の熱気のなか、ル・パルクも政治的な運動にも身を投じながら、芸術が限られた人々のみに享受されることや鑑賞者が受動的な立場にとどまることに疑問を投げかけ、視覚的な遊びやゲームの要素を用いることで、誰もが平等に芸術に参加してほしいという願望をかたちにしていったという。
ル・パルクの日本初個展となる本展は、70年を超える継続的な制作活動のなかでも、つねに鮮明な印象をもたらす「色」にフォーカスするもの。
ル・パルクは、黒と白、そのグラデーションを出発点に、59年より自ら構想した14色のみを用いた作品を展開。その作品群は、色彩論のように色を解析するのではなく、色を幾何学的なフォルム、あるいは可変性のメタファーとしてとらえるもので、シリーズごとに色の配列を設定し、回転や反復、分割などのバリエーションを探究することで生まれた。
本展では、アーティストの問題意識に迫るため、初期のモノクロ絵画や色彩探求のドローイングから、代表作である《La Longue Marche(ロング・ウォーク)》や《Lames réfléchissantes(反射ブレード)》、 またGRAVの時代から展開してきたモビールの新作までが並ぶ。展示はギャラリーだけでなくメゾンエルメスのファサードやウィンドウ・ディスプレイ、エレベーターにもおよび、20周年を迎えるメゾンエルメスのビル全体を使いながら、ル・パルクが目指す鑑賞者との開かれた出会いに挑む。