アルネ・ヤコブセンやヴァーナー・パントン、ポール・ヘニングセンなど、いまなお高い人気を誇るデザイナーたちを輩出してきた国、デンマーク。東京・代官山にあるデンマーク王国大使公邸では、そんなデンマークのデザインを体験できるイベント「デンマークデザインイベント:デーニッシュモダンの起源から最新のデザインまで 」が開催されている。
デンマーク大使館・大使公邸は、日本を代表する建築家のひとりである、槇文彦によるもの。同じく槇建築であるヒルサイドテラスの内部に位置しており、サーモンピンク色の縞状の凹凸があるサーモンピンクのタイルが特徴的な建物だ。
本展は、デンマークの産業団体である「Danish Industry」とデンマーク商工会議所、そして駐日デンマーク大使館が主催するもの。ルイスポールセンをはじめとするデンマークを牽引する10社の企業が参加し、普段は入ることができないデンマーク大使公邸の住空間でそれぞれのプロダクトを展示している。
公邸内では、1950年以前、デーニッシュモダンの源流とも言えるコーア・クリントによるデザインから、時代を超えていまなお愛され続けているアルネ・ヤコブセンやヴァーナー・パントンからノーム・アーキテクツやガムフラテージなど、若手デザイナーたちによる最新のデザインまで、家具、照明、インテリア、水栓金具、眼鏡、時計など様々なアイテムが並ぶ。大使の居住空間に溶け込むような展示方法にも注目だ。
本展のディレクションにも携わったというピーター・タクソ-イェンセン駐日デンマーク大使は、今回の展覧会について「もっとも重視したのは、ここが槇文彦建築ということもあり、その中にデンマークの家具が入るということです」と語る。「アートもこの空間にあうようにキュレーションされており、普段の住空間の姿を見てほしいですね。一貫性をもって、アートやデザインが共存しているということを伝えたいと思います」。
タクソ-イェンセン大使は、「デンマークは子供がデザインとともに育つ国。デザインの機能性はもちろんのことですが、それが自然に生活に溶け込んでいることがポイントなのです」としつつ、デンマークデザインの特徴についてこう語ってくれた。
「かつてはイギリスやドイツなどの影響を受けたこともありますが、20世紀に入り、いまのデンマークデザインの源ができ、それが現在に至るまで続いています。デンマークデザインは、建築や家具だけでなく、オーディオや陶磁器など様々な分野に応用されており、まさにデンマークのDNAと言えるでしょう」。
デザインだけでなく、公邸内に展示されてるアートにも注目したい。デンマーク芸術財団は毎年、美術品や工芸品、デザインなど約200点の作品を収集。その数は現在1万2000点以上におよぶ。こうした作品は倉庫に眠らせるのではなく、「使われる」ことが前提となっており、デンマーク全土で学校、病院、裁判所、図書館など様々な公共機関に設置されている。
公邸内にあるアートもこのデンマーク芸術財団のコレクションであり、日本とデンマークの国交樹立150年を記念して設置されたもの。全世界にあるデンマーク大使館のなかでもこうしてデンマークアートが展示されている大使館は数少ないという。日本では鑑賞する機会が少ない作品に触れられるのも嬉しい。
なお、デンマーク大使館の向かいにあるヒルサイドフォーラムでは、日本とデンマークの建築の影響関係にフォーカスした展覧会も8月8日まで開催中。こちらもあわせて見ることで、デンマークデザインへの理解がより一層深まるだろう。