デザイン × アート × ロボティクス。立命館大学に生まれる新たな学びの場

立命館大学が2026年4月に開設を予定する「デザイン・アート学部/同研究科」。これに先立ち、同大は同学部/研究科に教授としても着任するロボットデザイナー/美術家・松井龍哉およびフラワー・ロボティクスとともに新たな共同プロジェクトを始動させた。デザインとアート、そしてロボティクスが交わる未来の教育と創造の現場とは?

 2026年4月、立命館大学は京都・衣笠キャンパスに「デザイン・アート学部/デザイン・アート学研究科」を開設する。デザイン、アート、人文・社会科学、さらにはテクノロジーまでを横断しながら、21世紀にふさわしい創造の方法を探るこの新学部は、従来の美術系・デザイン系の境界を越えて、生活世界そのものを革新する人材の育成を目的としている。

 その理念を体現する取り組みとして、立命館大学デザイン科学研究所は25年4月、ロボティクスと芸術表現を融合させた研究開発を続けてきたフラワー・ロボティクス株式会社(代表:松井龍哉)と包括連携協定を締結。美と感性を重視した新しいロボットの開発、人とロボットが共存する生活世界の創造、さらに次世代のデザインリーダーを育成する教育プログラムの開発など、多岐にわたるプロジェクトがすでに動き始めている。

松井龍哉

 26年4月よりデザイン・アート学部/研究科の教授に着任する松井は、ロボットをたんなる「機械」として扱わない。彼にとってロボットとは、技術・社会・美学が交差する象徴的な存在であり、未来の文化そのものでもある。バウハウスの教育ダイアグラムの中心にあった「建築」を「ロボット」に置き換え、「21世紀におけるロボットは、かつての建築と同じように、技術的・美的・社会的価値を統合する象徴的な存在になりうる」と語る松井(『RITSUMEIKAN DA JOURNAL』インタビューより)。技術だけでも美学だけでも成立しない新しい総合的創造分野として、ロボットデザインを提示する。

 さらに松井が強調するのが、ロボットの自律性に対する視点だ。彼は、ロボットを道具の延長としてではなく、環境を感じ取り、自律的に行動し、人間の感性に寄り添う存在として捉える。つまり、ロボットが「便利なツール」ではなく、人間の生活世界に共感の回路を生む媒介ということだ。

 この考え方は、新学部の理念と深く響き合う。デザイン・アート学部/研究科が目指すのは、美的感性に裏打ちされた、「問題解決力」「問い直し力」「共創力」「問題発見力」「創造的思考力」を総合的に身につけた、クリエイティブで柔軟な思考をもつ人材の育成だ。松井の参画は、教育と実践の境界を取り払い、学生が現実社会と直接つながりながら学ぶ環境を強化するものとなるだろう。

 今回の協働により、新学部では産学連携を前提としたプロジェクト型の学びが本格化。美と感性を重視した共存型ロボットの開発、人間とロボットの共存によって生まれる新たな生活世界における芸術表現の探究、そして次世代のデザインリーダー育成教育プログラムの開発と推進──ロボティクスと芸術の共創による社会的価値の創出を目指し、人間とロボットが共存する新たな生活世界を提案しながら、美と感性を重視した視点から、未来社会における新しい文化や生活モデルの可能性を探究する場が生まれる。

 デザインとアート、そしてロボティクスを横断するこの連携は、立命館大学が描く「未来の学び方」の象徴でもある。文化と技術が共存し、生活世界そのものが再構築される時代に、どのような表現や価値が生まれるのか──その可能性は、2026年春、京都で新たな姿を見せるだろう。

編集部