パルコはいかに時代を表現してきたのか。「『パルコを広告する』1969 - 2023 PARCO 広告展」で振り返る伝統と流行

渋谷PARCOの開業50周年を記念し、パルコによる歴代の広告表現を通覧できる展覧会「『パルコを広告する』1969 - 2023 PARCO 広告展」が12月4日まで開催されている。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)*は公式画像

展示風景より、「1980年代とPARCO広告」 選定したゲストキュレーターは椹木野衣(美術批評家)、菅付雅信(編集者)

 渋谷PARCOの開業50周年を記念し、パルコによる歴代の広告表現を通覧できる展覧会「『パルコを広告する』1969 - 2023 PARCO 広告展」が、東京・渋谷の渋谷PARCO内 PARCO MUSEUM TOKYOで12月4日まで開催されている。

 本展は、半世紀を超える広告クリエイティブの歴史を現在の視点で再解釈し、一望できるものとなる。会場は、「予言」(1970年代)、「広告」(1980年代)、「渋谷」(1990年代)、「アート」(2000年代以降)といった4つの年代と時代精神を示すキーワードから、パルコの広告の原点が垣間見える構成となっている。

展示風景より、「『パルコを広告する』1969 - 2023 PARCO 広告展」エントランス *

 作品は現在から時代をさかのぼるかたちで展示されている。「アート」をキーワードに選定された広告が並ぶ「2000年代以降」は、村上隆キュレーションの「スーパーフラット」展(パルコギャラリー、渋谷PARCO)が開催された時期でもあった。

 00年代のクリエイションで特徴的なのは、デジタルネイティブ世代による個性をよりポジティブに受け止めるメッセージだ。パルコのインキュベーション活動にフォーカスを当てたコーポレートメッセージ「SPECIAL IN YOU.」もそのひとつと言えるだろう。

展示風景より、「2000年代以降の時代とPARCO広告」 選定したゲストキュレーターは布施琳太郎(アーティスト)、野村由芽(編集者)

 90年代の広告から見受けられるのは「渋谷」というテーマ性だ。ストリートカルチャーの中心地であった同地には世界中から多様な才能が集い、新たな「渋谷発」のカルチャーを牽引していった。大御所のアーティストやクリエイターを起用していたのが80年代だとすると、90年代は新たな可能性を持つクリエイターを積極的に起用していたようだ。それゆえ、いままでとは打って変わったスタイリッシュな広告を世に送り出すことができたし、それが「平成」という新たなカルチャーを形成していったと言えるのではないだろうか。

展示風景より、「1990年代とPARCO広告」 選定したゲストキュレーターは野宮真貴(歌手・エッセイスト)、千葉雅也(哲学者・作家)

 バブル景気だった80年代は、文化の隆盛もあり「広告」は花形の職業であった。この時代ならではの独自の力強さと華やかさ、良い意味での奔放さがクリエイションに表れていると言えるだろう。また、糸井重里や仲畑貴志らによる強烈なコピーが、広告の魅力をさらに引き出すスパイスにもなっている。当時のまま保管されてきたポスターに残る、印刷物ならではの質感や折り目のあともリアリティがあり面白いポイントだ。

展示風景より、「1980年代とPARCO広告」 選定したゲストキュレーターは椹木野衣(美術批評家)、菅付雅信(編集者)
展示風景より、「1980年代とPARCO広告」

 石岡瑛子、山口はるみ、小池一子らが活躍した70年代。当時の広告で打ち出されたのは「新しい女性像」だ。女性が自分たちのために自由に生きて良いし、これからはそういう時代が来る。これらの広告は、そんな来たるべき「女性の時代」を予見し、時代を切り開いてきた存在であったと言えるだろう。

展示風景より、「1970年代とPARCO広告」 選定したゲストキュレーターは上野千鶴子(社会学者)、はらだ有彩(テキストレーター)
展示風景より、「1970年代とPARCO広告」 

 なお、会場にて上映されている対談の内容は、会場で販売されるリーフレットにも掲載されている。50年にもおよぶPARCO広告の歴史を現在の視点から再解釈するもので、各年代のキーとなるビジュアルも掲載されているため、手に入れておきたい1冊だ。ほかにもここでしか手に入らないオリジナルグッズも複数用意されているため、ぜひこちらもチェックしてみてほしい。

展示風景より
展示風景より

編集部

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