富山、石川、福井の3県にまたがる広域が舞台となる北陸工芸の祭典「GO FOR KOGEI」。工芸の魅力を今日的視点から発信するプラットホームとして、2020年にスタートしたこのプログラムが、今年も開催される。会期は9月17日〜10月23日。
今年の「GO FOR KOGEI 2022」は、「感情をゆらす、工芸の旅」が全体のテーマ。総合監修は昨年の「GO FOR KOGEI 2021」に続き、秋元雄史(東京藝術大学名誉教授、練馬区立美術館館長)が務める。
秋元は今回のテーマについて、次のようにメッセージを寄せている。
現代を生きる私たちと「もの」との関わり方を、ものづくりの源流とも言える工芸を通して再考していきます。これまで手仕事で行われてきた工芸の取り組みも時代と共に変遷を歩んできました。時間を超えた工芸との出会いは、つくり手や産地だけでなく、その時代に沿った素材との向き合い方を知るきっかけにもなります。おおよそ自分とは無関係と思われたものと向き合うことは、ものと人が寄り添い、時間をかけて感情をゆらし、何気ない暮らしの中に質感をもたらしてくれます。それが私たちにとって最も身近な芸術である工芸なのではないでしょうか」「太古から変わらない普遍的なものから未来志向のものまで、工芸と人々の暮らしが密接に結びついたこの北陸の地で触れる経験は、皆さんの機微に触れ、感情をゆらすものとなるでしょう。(リリースより一部抜粋)
今年は重要文化財に指定された寺社仏閣3会場で同時開催する特別展や各地域で開催される7つの「工芸祭」との連携など、様々なプログラムが展開される。このなかでもとくに注目したいのが、特別展「つくる―土地、くらし、祈りが織りなすものー」だ。
秋元がキュレーターを務めるこの特別展では、繊維、染織、陶、漆、金属、木、紙など、多様な素材とそれへの関わり方や技術を「つくる」という視点によって見直し、創作活動を行う作家20名が参加する。会場ごとの参加作家を見ていこう。
勝興寺
日本海の沿岸部である富山県高岡市伏木古国府に位置する浄土真宗本願寺派の寺院「勝興寺」。3万平米という広大な境内が特徴のこの寺院には、本堂をはじめとする、12棟の建造物が重要文化財に指定されている。本展では、重要文化財の大広間、式台、台所、書院などの建築空間と、庭園など屋外空間を含む広大なエリアで作品が展開される。ここでの出品作家は小笠原森、樫尾聡美、鎌江一美、河合由美子、小曽川瑠那、小森谷章、奈良祐希、福本潮子、細尾真孝、宮木亜菜、吉田真一郎。
那谷寺
九谷焼の陶石が取れる白山の麓に位置する石川県小松市の仏教寺院「那谷寺」は、717年(養老元年)に泰澄が創建したと伝えられている。岩窟内に造られた本殿など7つの重要文化財と2ヶ所の名勝を有するこの場所。今回は特別拝観エリアに位置する重要文化財の書院や庭園、また通常拝観エリアの奇岩遊仙境が位置する境内や森の中で展示が行われる。出品作家は井上唯、入沢拓、鵜飼康平、近藤七彩、佐合道子、新里明士。
大瀧神社・岡太神社
深い山に囲まれた越前和紙の工房が軒を連ねる福井県越前市に位置する大瀧神社・岡太神社。大瀧神社は、791年(養老3年)に泰澄が創設したと伝えられており、岡太神社には日本で唯一の紙の神様である川上御前が祀られている。本展では、下宮の境内と、その周辺の杉林で作品を展示。鴻池朋子、橋本雅也、六本木百合香の3作家が出品予定だ。
昨年は美術と工芸の境界線を越境する2つの特別展を開催した「GO FOR KOGEI」。これを踏まえてさらに進化した工芸の祭典に足を運んでみたい。