美術家・ミヤケマイと書家・華雪(かせつ)の2人展「ミヤケマイ×華雪 ことばのかたち かたちのことば」が、2022年1月29日まで神奈川県民ホールギャラリーで開催されている。
「本当に大切なことって何だろう」。コロナ禍によってあらゆる優先順位や価値が大きく転換していくなか、そう問うことが多くあった。本展は、この機に立ち止まって考える人たちに向け、「『ことば』を贈る展覧会をつくりたい」という思いから企画されたもの。「ことば」の力と、「ことば」にならない「かたち」を探りながら、その問いについてふたりのアーティストが応える試みだ。
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ミヤケマイは、日本の伝統的な美術や工芸の繊細さや奥深さに独自の視点を加え、過去・現在・未来をシームレスにつなげながら、物事の本質や表現の普遍性を問う作品で知られるアーティスト。書画という日本美術のフォーマットに則り、「言葉にできることとできないこと」でひとつの世界を構築し、作品が展示される場所の歴史や文化などの声なき声を拾い上げ、コンセプトや展示に組み込むサイト・スペシフィック・アートを各地で展開してきた。
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華雪は、幼い頃に漢文学者・白川静の漢字字典に触れたことで漢字のなりたちや意味に興味を持ち、文字の成り立ちを綿密にリサーチし、現代の事象との交錯を漢字一文字として表現する作品づくりに取り組むほか、文字を使った表現の可能性を探ることを主題に、国内外でワークショップを開催している。
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本展では、世界とつながる港町である県民ホールギャラリーの立地にふさわしく、舟や水を使った大規模なインスタレーションをミヤケマイが発表。人間の営みから、「わかる」ということ、人が何を取り入れ、何を排出するのかという問いに、真摯な眼差しを向ける。
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いっぽうの華雪は、人の根源にある自然への畏れを「木」という文字を糸口に再考し、人が精神の奥底から「ことば」を取り出す「書く」という行為そのものとあわせて作品化することを試みる。
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「ことば」は、語り、伝え、考えるための道具でありながら、人間は「ことば」にならない感情の震えを抱えて生きており、アートとして様々な方法で表現してきた。ふたりのアーティストが「ことば」の光と影の関係性だけでなく、「かたち」を変えて生み出した世界をぜひ堪能してほしい。