中国陶磁や高麗・朝鮮時代の韓国陶磁を中心に、国宝2件、国の重要文化財13件を含む5672件が収蔵されている大阪市立東洋陶磁美術館が、ふたつの企画展を2022年2月6日まで開催している。
ひとつは、陶芸家・柳原睦夫作品4点の受贈を記念する企画展「受贈記念 柳原睦夫 花喰ノ器」。個人蔵を加えた柳原作品41点とともに、柳原の作品に華道家・杉田一弥が花を活けた写真作品16点をあわせて展示している。
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施釉陶 大阪市立東洋陶磁美術館蔵(大森敬吾[Museum李朝]寄贈) 登録番号05552 撮影=麥生田兵吾
柳原は1934年高知市出身。京都市立美術大学(現在の京都市立芸術大学)で富本憲吉(1886〜1963)に陶芸を学んだあと、アメリカのワシントン大学やアルフレッド大学に招聘され、1960年代から70年代にかけて数度にわたり約5年間をアメリカで過ごした。
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施釉陶 大阪市立東洋陶磁美術館蔵(杉山道夫寄贈) 登録番号05629 撮影=麥生田兵吾
抽象表現主義やポップアートに代表されるアメリカ美術の動向を現地で体感し、帰国後には鮮烈な金銀彩を用いた独特の造形作品で脚光を浴びる。また「絶対に陶芸を捨てない」という意識を持ちながら、日本のやきものの豊かな文化の連続性を否定せず、現代における新しい表現を模索し続けている。
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もうひとつは、関西在住の福井夫妻により約20年にわたって収集された「古九谷」コレクションから28点を紹介する企画展「福井夫妻コレクション 古九谷」。
緑、黄、紫、赤、青の鮮麗な色彩による斬新な文様が魅力の江戸時代の初期色絵磁器は、「古九谷」あるいは「古九谷様式」と呼ばれている。17世紀に中国の五彩などの製作技術を導入し、ごく短い期間に生産された「古九谷」は、当時の需要と美意識を反映し、人々が集まる特別な場で使われたと考えられている。
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古九谷様式 個人蔵
本展では、皿、香炉、猪口などの小品を中心に、宴の場を飾った大皿など、バラエティーに富んだ作品を展示することで、独自の色彩感覚で描かれた古九谷様式を知る機会となる。
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古九谷様式 個人蔵
なお同館では、所蔵の国宝2件と重要文化財13件がすべて観覧できるコレクション展「安宅コレクション中国陶磁・韓国陶磁、李秉昌コレクション韓国陶磁、日本陶磁、沖正一郎コレクション鼻煙壺」(〜2022年2月6日)と、コレクション展関連テーマ展示 「加彩婦女俑に魅せられて」(〜12月26日)も同時開催されている。
22年2月7日から23年秋まで同館は長期休館を予定している。休館前最後の展覧会で、古陶磁から現代の陶芸作品まで、時空を越えた陶磁の多彩な表現を堪能してほしい。