映像や解像度、仮想空間、歴史、仏教美術などをテーマに、データの存在性を問いかける作品を制作している現代アーティスト、鈴鹿哲生。その最新の個展「DATA PAINTING」が、東京・麻布台のRikka Galleryで開催されている。会期は11月19日まで。
鈴鹿は1973年京都生まれ。現在は東京を拠点に活動している。日本の伝統技法と最先端の画像処理技術を融合させた作品を発表してきた鈴鹿は、これまでロンドンギャラリー白金やBTFギャラリーで個展を開催。また、京都伝統産業ミュージアム、MOA美術館、金沢21世紀美術館、福岡アジア美術館、カリージョヒル美術館(メキシコ)などでのグループ展や、バルセロナ映画祭(スペイン)やワールドワイド短編映画祭(トロント)などの映画祭にも参加してきた。
本展では、鈴鹿が独自開発したプログラムにより実現した、赤緑青の3色でディスプレイスクリーンを構成するCRTカラーに着目した新作を展示。データをモニターのなかで完結させず、絵画表現に落とし込むことを通してデータの価値づけを試みる。
例えばキービジュアルとなる《La Bayadèr 2021》は、世界各国で公演されてきたバレエ作品をモチーフに、バレリーナに見立てたモデルデータを連続して配置したもの。コピー可能なデータの連続性を、かつてのアメリカ大量生産・消費社会と呼応した情報過多な現代社会の象徴として大胆に描き出している。
鈴鹿はステートメントで、本展について次のように述べている。「データは実体を持たないマテリアルである。故にその存在性を語るには実空間上での表現が不可欠である。それはまるで仏師が木に宿る仏の姿をを彫り起こすかのように、この不可視なデータの痕跡を露呈させ、創出する。そして、ここにまた現代の情景が出現した」。