この秋、訪れたいアートスポット。非日常の島である「ベネッセアートサイト直島」

1992年に直島に竣工したベネッセハウスをはじめ、島の固有の文化や自然、コミュニティと一体となりながら、犬島や豊島でも展開されてきた「ベネッセアートサイト直島」。その非日常の島で、ここでしかできない体験を紹介する。

文=佐藤恵美

地中美術館(直島)の外観 撮影=大沢誠一

 世界で支持されるガイドブック『ロンリー・プラネット』やニューヨーク・タイムズ紙などで取り上げられ、旅先として人気が高い「Naoshima」や「Setouchi」。自然環境や新鮮な食材など、その魅力を支える多様な資源のひとつにアートがある。

 なぜ瀬戸内が世界から注目されるアートの地となったのか。その礎を築いたのは、1980年代にスタートした福武書店(現ベネッセホールディングス)による直島での活動だ。同社創業者の福武哲彦は直島の自然環境に魅せられ、世界の子供たちが学ぶキャンプ場を構想するも、急逝。事業を継いだ息子の總一郎が、「ベネッセ(よく生きる)」とは何かを考える場にしていくため、直島に現代美術を取り入れる。

犬島「家プロジェクト」A邸でのベアトリス・ミリャーゼス《Yellow Flower Dream》(2018)の作品
撮影=井上嘉和

 1992年にベネッセハウスを竣工し現在に至るまで、少しずつ島の固有の文化や自然、コミュニティと一体となりながら、犬島や豊島でも展開してきた。それらを総称して「ベネッセアートサイト直島」と呼んでいる。

 作品の多くは場所の特性を生かしたサイトスペシフィック・ワークで、年間を通して鑑賞できる。とくにクロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの作品を有する地中美術館は、自然光で鑑賞するため時間や天候、季節によって作品や空間の表情が変わり、ここでしか得られない体験となる。

地中美術館のクロード・モネ室 撮影=畠山直哉
地中美術館内観 撮影=松岡満男

 福武財団の広報・太田早苗は、ベネッセアートサイト直島の見どころについてこう語っている。「安藤忠雄さんが設計した地中美術館は、瀬戸内の美しい景観を損ねないよう建物の大半が埋設された美術館です。『クロード・モネ室』は作家の想いを活かして自然光で作品をご鑑賞いただけます。角のない壁、自然光の間接照明、額縁、壁、床の白の演出など、《睡蓮》のために考えられた空間です。こうした自然・建築・アートの融合する空間で、天気や訪れた時間帯によって見え方が変化するアートと向き合うと、五感を刺激され、普段は気づかない考えや視点が見えてくるかもしれません」。

 人と自然の関係についてあらためて考えずにはいられない昨今、その問題にいち早く取り組んできたアートの島を訪れ、思考を巡らせてみたい。

李禹煥美術館(直島)にある、海を望むアーチ型の彫刻は李禹煥の新作《無限門》(2019)。門をくぐることで「大地とつながり、宇宙の無限性に出合う」(李)ような感覚が呼び覚まされる
撮影=山本糾
豊島美術館より、内藤礼《母型》(2010) 撮影=森川昇

編集部

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